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ドント・ブリーズ2のモモモのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ2(2021年製作の映画)
4.2
1作目の構成に「エイリアン2」的「今度は戦争だ!」エッセンスを加えた上で観客をドン引きさせた盲目お爺さんが抱える心の傷を真っ正面から描く理想的な続編。
監督も交代してるしなぁと期待薄で鑑賞したので予期せぬ傑作に不意打ちを喰らった。
不満を挙げるなら「エイリアン2」と同じ様にホラー色が薄くなってしまった事だろうか。
一夜の中で「よし!やっちまえ!こんな奴ら!」という導入から「あ…こっちも応援できない…誰も応援できない…」とツイストする一作目を反転させた上で「やっぱり今回も全員糞」な地獄絵図プロットが最高だ。
2作目故の「この爺さんは信用ならんぞ」と言う先入観を逆手に取って観客を翻弄し続ける。
ヒーローも、ヴィランも、誰もいない。いるのは身勝手な者ばかり。
「よし!全員死んじまえ!」という物語の中で生存したのが「他者の為に行動した者」である事も良い。
誰も応援出来ないな、女の子だけ無事でいればいいな、と油断していた所に本作は「彼は加害者だが、被害者でもある」という事実を突きつける。
1作目でドン引き、2作目でもドン引き、まるで感情移入出来ないよ…と離れた心を再度繋ぎ止める。戦争で傷を負って「心を病んでいる」男である事を思い出させる。
「自分は加害者で、化け物なのだ」と自覚するまでの物語。化け物が人間に戻るまでの物語なのだ。
彼の罪が許される訳でも、同情できる訳でもないが、今一度ひとりの人間として彼を見る事が出来る。
少女は文字通り「母との繋がり」を「断ち切り」、父を殺して父を救う。
不死鳥が同じ名前で生まれ変わるラストショットはたまらない。
擬似的関係性の末に辿り着く独りよがりな救出劇(大殺戮)はまるでThe Last Of Usの様で…何とも言えない物悲しさを秘めている。
新監督であるサヤゲス監督の「ホラー演出力」が非凡な物であったのも本作を傑作たらしめている。
序盤の「1カット隠れんぼ」には度肝を抜かれた。あの緊張感、空間把握力、それらを統合するカメラワーク。
実写版MGSの参考作が現れてしまうとは。
監督の趣味か、脚本家の趣味か、プロデューサーの趣味か、「悪魔を見た」好きが確実に紛れているな…という2シーンの時点で僕の中では大傑作でした。
ゲームオブスローンズのトラウマを思い出す可能性があるので、そこだけは注意して下さい。
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