リョウ

セブンのリョウのネタバレレビュー・内容・結末

セブン(1995年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ストーリーの8割は雨が降るが、残り数十分だけ空は快晴になる。
むしろミルズにとっては逆だろうと思うが、登場人物の信条とリンクしていない天気を演出する作品は生まれてこの方初めて見たので面白かった。

ストーリー自体は何かしらのルールに則って連続殺人が起き、ベテラン刑事と若手刑事が相棒となって解決を目指すというシンプルなものだが、ルールの一貫性、追い詰めるシーンのドキドキハラハラ、ベテランの落ち着きと若手の感情論、これだけでも十分楽しめる作品。

初め、粋がった若手と、定年を1週間後に控えたベテラン刑事の歯車はまるで噛み合わないけれど、ジョンの部屋へ踏み込むときから徐々に噛み合ってきたのかなと感じた。そして、あと一歩で防げた娼婦の殺人が発見された直後のバーのシーンが最も印象的だった。

世の中は醜く、人々は無関心、無関心こそが最善の解決策だと分かっているが、無関心こそ美徳といった世の中にはうんざりだと話すサマセットに対し、ミルズは人々が無関心なんてことはどうでもよく、自分が世に関心があればそれでいい、ともかく、世の中に嫌気が差して定年を迎えるのではなく、定年を迎えるからそう思いたいんだと話す。サマセットと比べると経験も浅く、若いミルズだからこそ言えたセリフかもしれないが、この一言がサマセットに刺さり、翌朝彼は最初嫌がっていたがこの事件を最後まで担当させてくれと頼む。

ナメていたミルズに説得された形に見えたし、この瞬間から本当の相棒として歯車が回りだした。同時に、サマセットは一連の事件の結末を①奴を逮捕する②奴が7人まで殺し続けるかの2つだと予告する。皮肉にもそのどちらでもない結末をこのストーリーは迎える。

そして、最後のシーン直前の車中でジョンは、この腐った世の中でだれが彼ら(ジョンが殺した5人)を本気で罪のない人間だと思っている?だが問題は、もっと普通にある人々の罪だ。それが日常で些細なことだから我々はそれを許してる。と話す。

つまりジョンは、世間には罪に問われない罪人が腐るほどいて、その点に無関心な普通の人々こそが本当の問題だと主張している。これは先述したバーのシーンでのサマセットの主張と重なる。ジョンが話している間サマセットのカットが映るが彼は何も言わない。しかし、ミルズの一言によってサマセットの心は変わっていた。

この車中こそが本当のクライマックスで見応え抜群でした。ジョンの計画はサマセットとミルズによって途中で変更されたが、ルールに則り6,7つ目の罪も彼の計画通り、ミルズによって完遂された。文字通りバッドエンドとなるが、この映画が仮にハッピーエンドだったとしたら酷くつまらない映画だったと思います。

サマセットはストーリーの冒頭と、最後では180度違った考え方を持っており、個人的にはそれこそがこの映画のメッセージの一つではないのかと思ってます。この世の中は醜い(かもしれない)が、戦う価値がある。そして、冒頭に述べた天気の話だが、サマセットの心情と見事にリンクしている。猟奇的連続殺人犯であるジョンと同じマインドを持っていたサマセットは奇しくもミルズによってこの世でなんとか戦う意志を持ち、雨が止んだと受け取れたし、見終わってからこの演出に理解したから、なんとなく敢えて最後の方にこれを書いてみました!

邦画でも似たような設定の作品あった気がするんだよな。刑事と連続殺人犯のマインドとバックグラウンドが実は似てるみたいな作品。

何も考えずに見たとしても十分満足できる作品やし、何回見ても見るたびに面白さを更新できる作品。超オススメ!!
リョウ

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