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おもいで写眞のpecoのネタバレレビュー・内容・結末

おもいで写眞(2021年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞後、涙が止まりませんでした。


今作の主人公である結子さん
結子の生い立ちや過去からの嫌悪感からか誰に対しても仏頂面で愛想がないけれど、単に不器用なだけで、子供っぽく意地っぱりな言動があるけれど、何事にも一生懸命で気持ちの良いほど嘘がない彼女。

結子の役柄は複雑で多彩な感情表現が求められると思うけれど、熊澤監督の手腕なのか人物の描写が丁寧に描かれていて、

特に結子の仕草や表情が素晴らしく、涙を流すにもただ涙を流すのではなく、悔しい涙や悲しい涙、嬉しい涙と感情が見ている側に伝わってくる。


その彼女の心を和子さんや団地に住む住民との出会いによって徐々に解きほぐされていき、彼女が撮る一枚の写真を通して和子さん、柏葉さん、団地の住民、どの登場人物も『おもいで写眞』の主人公であるように感じられる映画でした。

印象的だったのは
劇中のあるシーンの台詞に

『目に見えていることが真実ばかりでなく、見えないけど、そこにあるものが確かにある。』

嘘がときには真実になり、また優しい嘘になるのだと、結子自身もおばあちゃんの優しい嘘に気付くことができたのかなと...
最後の美しい夕日のなかで結子が見せた柔らかい微笑みがその答えだと思えた。


特に終盤の写真展では
写真展に訪れた地元の方たちの笑顔を見て、写真一枚のおもいでがその人にとって宝物であり、記憶は写真を通して鮮明に蘇るのだと…落とし物を拾いすぐあげるような感覚になりました。

そして、エンドロールに流れくる写真を見ながら両親の顔が思い浮かび、私も両親や家族の今を撮りたいなと、今なお制限される日常生活において、ぎすぎすとした窮屈な心を少し溶かしてくれる温かい作品だと思います。
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