「女のいない男たち」に収録されたわずか50ページほどの短篇が、テーマはそのままにまったく新しいストーリーで約3時間の重厚な映画に昇華していて驚いた。
ふたりはひとつになんてなれなくて、“本当のこと”はいつだって自分の心の中にあるもので。
客観的事実や秘密があっても、この愛が偽りだということではない。
原作はドライブ中の2人の会話に家福の回想が含まれている形だから映像化の想像がつかなかったけれど、脚本が素晴らしかった。
同じ短篇集に収録されている「シェエラザード」が好きなのだけど、セックスの後に妻が語るお話(後に脚本になる)に使用されていて冒頭から高揚した。
長尺だけれど一瞬も飽きないほど没入できて、それは私がハルキストだからというわけではないと思う。
劇中劇「ワーニャ伯父さん」がとにかく素敵で、多言語演劇という表現方法に大きな可能性を感じた。
思いを届けるために、相手の気持ちをきちんと受け取るために、もっと“言葉"を美しく使いたい。