豚アーニャ

ドライブ・マイ・カーの豚アーニャのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

静かで、詩的なセリフが多かった。ドライブしてるみたいな感覚。
最初の方は浮気現場を目撃した後の家福の情緒も理解できないし、中盤ぐらいまでどこが面白いんだろうぐらいに見てたけど、後半になるにつれて答え合わせしていくような、抽象的なことがどんどん具体化されていって繋がりがわかってきた。

「演じる」が個人的に重要なキーワードに感じていて、
家福が音に対して浮気していても傷つかないように自分を演じている。
みさきの母の別人格「幸」の存在に対して「演技していたのかも」とのセリフ。
多重言語の演技指導。
高槻に対して告げた「自分をコントロール出来ていない」。
セックスが終わった後に現れる別人格みたいな音。

家福が自分の傷と向き合って「音に会いたい。」ってなったの、見てて凄い切なかった。音とちゃんと話したら今の生活が壊れてしまうかもしれないって言ってた恐怖から一歩進んだんだなと思った。し、多分音は浮気していることを家福が知っていて、その事について話したいのかなと思った。途中で高槻と車内で話している時かな?
彼女には真っ黒な心がある?みたいな事を言ってたのが引っかかって、それは、亡くなってしまった絶望がずっと音の心の中にあって、それを出すことは家福との生活が破綻してしまうのではと思ってたからなのかなと思った。
音が話す「空き巣の左目に鉛筆を刺して殺した」は、家福の緑内障と繋がっている。つまり家福と夢の中の幼馴染?はリンクしていて、その先を高槻から聞いた時に、「私が殺したのに、その家の人は学校でも明るく過ごしていて世界は何も変わっていなくて、変わったのは防犯カメラが着いていただけ。だから私はその防犯カメラに「私が殺した」って言ってやったの。」
は、娘が亡くなったのは自分の責任、そして浮気しまくってたのに、それでも普通に接してくれている家福の優しさが辛かったんじゃないかな、と思った。
音も何か言葉がほしかったんだなーと。
序盤で家福に音が高槻を紹介した後、嫌そうに衣装を椅子に投げたのは「これからこいつと関係を持つのか」って勘づいたからだと思った。本当に思う、ちゃんと話す事があるなら話さなきゃって。
私はあなたといられて本当に良かったって車での会話。そう考えると凄く切ない…。


みさきは「嘘つきはすぐわかる」ってセリフも言ってたのに幸の存在を信じていて、見捨ててしまったことに対して絶望感を出していたのはわからなかったな。
劇中でみさきと家福の距離がジワジワ近づいていくのが良かった。いつの間にか車内で待つようになって後部座席から助手席になって、車内でタバコを吸って、ハイルーフから2人で煙草を掲げるシーン。あれだけでも見に行ってよかった思うぐらいめちゃくちゃ良いシーン。

もし自分の娘が生きていたら。
みさきの境遇に亡くなった娘を重ねて、故郷にも行き、愛車をみさきに受け渡す。緑内障が進んで乗れなくなったから。
ラストシーンはそうなのかなと思いました。後部座席には韓国人夫婦の飼っていた犬が乗っていて、韓国語のスーパーに行って右車線を走っていたのを見ると、韓国人夫婦と一緒に韓国で暮らしているのかな。夫婦の子供も流産したって劇中で話していたし。マスクしてたからコロナ禍なんだろうけど、急なメッセージ性があるのかないのかわからない謎のラストが不思議だった。

長くなりましたが、良い映画だった〜!
豚アーニャ

豚アーニャ