このレビューはネタバレを含みます
村上春樹の原作でアカデミー賞ノミネートの話題作ということで、観賞。
とてもよかった。
村上春樹の原作は短編でわりにあっさりとしたものだったのでどのように映像化されているのかと気になっていたが、映画ならではの創作部分がかなり多く、原作というよりも原案といった印象。
チェーホフの劇に自己を投影しながら、自己の中の暗い部分と向き合っていく話。
原作になかった劇描写はとりわけすばらしく、韓国語手話で話すシーンはとても美しかった。
度々劇中に出てくるタバコ。主人公とドライバーは、苦しみや悲しみを抱えながらタバコを咥える。最初はそれぞれ1人で喫煙していたタバコも、いつしか2人で吸うようになる。車から突き出したタバコは2つ並んだ中指だ。それは神様へ向けられたものか、天上にいる大切な人へ向けられたものか。
北海道の母(幸)が死んだ場所にタバコの火をお供えしたのは、その苦しみをおいていくということだろうか。
観た翌日も劇中のシーンが頭をよぎり、それを反芻する。いい映画だったなと思う。