このレビューはネタバレを含みます
たまげた…。3時間の長尺ながら、もっと観ていたいと思わせる"美"というか"粋"がある。映像の意味を問うた作品…とも言えようか。⚠以下ネタバレ多め⚠
「細かすぎて伝わんないみたいなことを考えている」と高槻（岡田将生）から賞される家福夫婦（西島秀俊・霧島れいか）。この言葉は、作中作だけじゃなくて、映画全体にも当てはまる。詰め込まれた全てに、コダワリの息が吹き込まれている。
通常ならカットしてもいいシーンをあえて残す。無音をわざと活かす。映画でありながら、まるで本のように台詞だけで回す。登場人物には抑揚がない棒読みをさせる。それらはどれも不自然なはずなのに、驚くほどに馴染んでいる。
「（音は）自然に愛して、自然に裏切っていた」と語る家福は、音の二面性を2年以上も受け止めきれなかった。この穴を埋めたのは渡利みさき（三浦透子）。ともに大事な人を見捨てたふたりの境遇は重なる。「ぼくたちは大丈夫。」
好きなポイントはたくさんありすぎる…。
ヤマガ宅へ侵入して印を残す少女、物憂げで年を感じさせない妖艶な音、満面の笑顔が素敵なコン・ユンス（ジン・デヨン）、ラストに声が響き渡るかの怪演を魅せた韓国手話者のイ・ユナ（パク・ユリム）、そして多様な言語話者を一つにまとめる演劇手法。
チェーホフ『ワーニャ伯父さん』はそのうち読むとしよう。
