まだ上映している映画館があったので、観に行ってきました。
これをスクリーンで観られて、本当に良かった。
原作は未読だけど、村上春樹っぽい独特なセリフにゾワゾワしながらも、役者さんの演技と映像と音に引き込まれ、3時間があっという間。
人の心の奥深くに切り込んだ、メタファーに溢れた内容だったと思う。
一人一人がとても個性的で奥行きのある人物で、どの人もその人以外では考えられない配役だったと思う。
西島秀俊さんはもちろん、岡田将生さんの演技がすごくて息を呑んだ。
舞台シーンは圧巻で、最初、多言語の劇は見づらいかと思ったけど、終盤では言語が違うのを忘れるくらい見入ってしまった。
そして、手話の表現力があんなにすごいとは思わなかった。ラストの手話での長台詞は心に迫ってくるものがあった。
劇のセリフが登場人物の心情とリンクしているんだろうけど、具体的にはよく分からず。
ただ”真実はそれほど恐ろしくないのよ 最も恐ろしいのは真実を知らないことよ”っていうセリフだけは何回も出てきて、覚えてしまった。
もしすごく時間ができたら、チェーホフも読んでみたい。
一つ一つの事柄を精神分析的に見ようとすると、無限に解釈があって大変なことになるだろうと思った…。
私の思考力で言えることは少ないけれど、
家福にとって、奥さんの音の死は、自分が向き合うことから逃げていたが故に失ってしまったもの。
亡くなった娘と同い年のみさきと旅をすることで、押し込めていた感情と向き合うことができた。
みさきにとって、父親の出身地かもしれない広島で父親と同じくらいの年齢の家福に出会い、一緒に故郷に帰って母を弔うことは、大きな意味があったのだろう。
音が語っていた物語の燃えるような愛は家福との夫婦間にはなく、対照的だったように思える。
セリフにあったように、家福が触れられなかった音のそういう部分は、たぶん言葉にしづらいものであるし、人の心を全て知るのは難しい。
しかも相手のことを知るには自分とも向き合わなければならず、とてもしんどい。
でもこれを見て、そういう分からない部分に向き合って考え続けていきたいと思った。
そして、役を演じるのに深く自分と向き合い続けている役者さんは改めてすごいと思えた。