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ドライブ・マイ・カーのtsukikoのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

映画「ドライブ・マイ・カー」初鑑賞。

アカデミー賞やカンヌなど多数の賞を取った話題作。原作は村上春樹。主演は西島秀俊。

俳優として成功した男が妻の浮気を知るも、関係を壊したくない思いから感情を飲み込み、もやもやしてるうちに妻が突然死。昇華できない思いの中、仕事の関係で雇ったドライバー女子と心を通じ合わせていく話。と書いてしまうにはあまりにこの話の魅力を欠きすぎているので、まあ本編を見てください。面白いから。

劇中、チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」がキャストそれぞれの自国語で演じられる(なので英語、日本語、ドイツ語、などが入り乱れる)舞台や、その練習風景にかなりの時間割かれている。理由は戯曲のテーマと映画のテーマが密接しているから。

「ワーニャ伯父さん」のテーマのひとつは幸せを得るための忍耐であり、「ドライブマイカー」も主人公が耐え忍んで幸せを維持させようとしている。

前者は人生を、後者は愛にたいするそれで、行く末に幸せがあるかないかわかんないけど、まあ、耐えたらいいことあるかもねって思いたいのが人間だけど、色々あってそうもいかない。

「ドライブマイカー」では主人公が最愛の妻を亡くしてしまう。妻がどう思っていたのかは闇の中。それでも、たぶん妻は主人公を心から愛していたし、同時に男たちを別次元で悪気なく欲していたことは間違いなく、人生にはそういうどうしようもなさが多々ある。特に愛はしょうがないものだから。

作中でなんと言っても素晴らしかったのは、戯曲のラストであの有名なセリフを聴覚障害を持つ役者が手話で伝えるシーン。演じたパク・ユリムの演技には息を呑んだ。迫真の演技。画の美しさもあり、目が離せなかった。

また、妻役の霧島れいかにも拍手を贈りたい。ドラマ「パパ活」での妻役を思い出させる。影のあるミステリアスな美人を演じさせたら右に出る者なし。

物語全体としては、少し不思議な設定が散りばめられていておとぎ話のようでもあり、事件もたびたび発生するので飽きさせない。

ロケ地も美しく、あっという間の3時間でした。

なお、チェーホフはいろんな訳があるので読み比べると楽しいよ。
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