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ドライブ・マイ・カーのみずのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
妻を失った男の喪失感と、そこから立ち直ったと感じていたが、実際は心の奥に心残りと大きな傷があった。それに自ら気付き、「本当に」立ち直っていく姿が描かれている。約3時間の長編映画でボリュームはかなりあるが、ストーリーを慌てることなく丁重に紡いでおり、緊張感がある映画だった。



また、映画の中で主人公が演じる劇でのセリフ内容が、主人公の抱える問題やこの映画のストーリーと重なっており、各登場人物のことを諭すようなものになっている。そのセリフが登場人物の心情を巧みに表現されているところや、映画の中での一つ一つのセリフの独特な間合いが登場人物の心情を増幅させ、見ている人を感動させ、捉え方に奥深さをもたらしている。映像の美しさと広島・東京・北海道・韓国が舞台となっており、スケールの大きさがより、この映画に含まれるメッセージ性というものを強調しているように思う。



クライマックスの劇の舞台での沈黙の主人公家福の救済が示唆されるシーンは圧巻でとても興味深かった。そして、ラストのシーン。登場人物が再生へと向かう姿には安心させられる。また、主人公家福の赤色の愛車の存在は主人公家福と常に一緒にあり、途中でドライバーとなった女性に最後託しているように思える最後のシーンでは、過去に取りつかれることなく前を向き希望を持って再出発しているように思え、とても興味深く感じると共に、愛車の存在の重要性を考えさせているのではないかと感じる。
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