セックスしながら奇天烈な寝物語が始まる冒頭のエピソードに面食らいますが、中盤でしっかり謎解きがあり安心。とっつきにくそうな映画かと警戒したのですが、思ったより分かりやすく、見やすい映画でした。
この映画描いているには「コミュニケーションの困難さ」なのかな。家族が言葉を尽くして会話しても、伝わらないことがある。そもそも自分の気持ちだって心の奥底に隠している。そういうもどかしさに苛々する人たちのドラマだと思います。
でも、それだけを語っているのであれば凡庸。この映画が抜きん出た作品となったのは、多言語演劇というメタファーが秀逸だったところでしょう。
映画全編にわたって繰り広げられた多言語演劇では、相手の言葉がわからないこと前提に置いて、対話しなければいけないという試練が俳優を課せられる。そこから何かが生まれるのかを私たちは固唾を飲んで見守ることになります。分かりやすいカタルシスが生まれるわけではありませんが、貴重ば映画体験でした。