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ドライブ・マイ・カーのadonaiのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.6
村上春樹の描く世界観を具現化したロードムービー。
透明度の高い人物、難解ではないが抽象的なナラティブを脚色せず、小説がそのまま映像化されたように無機質かつ淡々と舞台俳優家福の孤独が表現されている。
村上春樹と言えばやたらと持ち物や音楽に強い拘りを持った自称普通の男がほとんどのタイミングでビールを飲み、やがてなんやかんやで女を抱く話が多い印象だが、短編集では結構異質なものも多い多筆作家でもあり、しかし「自分の車を運転する無愛想な女」というだけで何とも幻想的で実に村上春樹らしく聴こえる絶妙な設定には感服の至るところである。
不倫を知りながら、それでも離れたくなかった妻と死別し、その生前最後に切り出した話を聞くことが叶わぬまま、過去に囚われる男。別れ話だったのかと考えると他人事ながらに胸が詰まる思いになり、北海道で感情を吐露するシーンにはカタルシスがある。
岡田将生のサイコパスが既視感強すぎてちょっとギャグシーンに見えてしまう。
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