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女王陛下のお気に入りのadonaiのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0
ヨルゴス作品にしては不条理やシュール表現が少なく、反面、美術面に力が入っている。
これまではシチュエーションの突飛な発想力こそ監督の魅力であると考えていたが、本質的には人間の行動や心理をシミュレートし、実験的に観測するような冷淡で機械的とも言えるドライさと、人間の生々しさが合わさって生まれる不自然で人工的な気持ち悪さこそ本領であると気付かされた。
本作では正に三者三様な女達の群像劇が描かれるが、最早破滅に向かうだけの王政で内部から瓦解するいたたまれなさと、それに反して優雅にして華美な王宮の装飾という空虚を際立たせるコントラストが実に侘しく、誰も報われないまま喪失のメタファーともいえる兎へとフェードしていくラストは尾を引く映画のお手本とでも形容したくなる後味。
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