カタパルトスープレックス

ヒッチャー ニューマスター版のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

4.3
遅れてきたアメリカン・ニュー・シネマ。ルトガー・ハウアーの代表作の一つに数えることができるホラー・サスペンスです。彼のハマり役といえば『ブレードランナー』(1982年)のロイ・バティーと並べられるくらいのインパクトは本作のジョン・ライダーでしょう。

テーマは「狂気を止めるのは狂気」なのでしょうか。車を長距離輸送するためにシカゴからカリフォルニアまで運転するアルバイトをしているジム・ハルジー(C・トーマス・ハウエル)はヒッチハイカーを拾います。その名はジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)。ジョン・ライダーは知能の高い殺人鬼なのですが、なぜかジムは殺さない。殺さずに追い詰めていく。ジョン・ライダーの目的はなんなのか?という話です。

ルトガー・ハウアーの不気味な演技はさすがなのですが、好青年ジムが追い詰めながらも狂気に導かれる姿を演じるC・トーマス・ハウエルも素晴らしい。『アウトサイダー』(1983年)で主役ポニーボーイ・カーティスを演じた頃はアイドルっぽいかわいさでしたけどね。本作で本格派に脱皮しました。

それにしても、なぜ80年代にアメリカン・ニュー・シネマのようなアンチハッピーエンディング(ともいえないのだけど)なロードムービーを作ったのか。ヒリヒリするような荒野を舞台とした心理戦。これが70年代に作られていたら、もっと有名な作品になっていたんじゃないかなあ。