りょう

エスター ファースト・キルのりょうのレビュー・感想・評価

3.6
 実際には25歳になった前作の主演俳優が10歳のエスターをふたたび演じたとわかって、「さすがに顔立ちとか無理だろう」と思いましたが、物語の設定からすると、それがむしろ効果的ですらありました。大人の登場人物との身長差は、いろいろと工夫しながら表現しているところも面白かったです。
 タイトルのニュアンスからすると、エスターのパーソナリティが形成される過程の物語かと思いましたが、彼女は冒頭からサイコパスっぷり全開でした。これはこれで面白かったです。
 物語として「こんなもんかな」と思いはじめた中盤で判明する真相は、まったく予想していなかったタイプの驚愕で、「そっちのはなし?!」ってなる衝撃があります。前半にあった母と兄の言動の違和感は、そういう理由があったのかと思わせる脚本と演出が素晴らしいです。
 ただ、それ以降の展開が物足りない印象でした。とても微妙な家族の関係になったのだから、エスターがもっと窮地に陥ってもいいし、そこから反転攻勢する展開に面白味がありません。映像が古めかしく霞んでいたことにも違和感がありました。2007年のエストニアの精神病棟を舞台にした冒頭は、その雰囲気が効果的でしたが、彼女がアメリカの裕福な家庭で生活するようになっても、ところどころ…。どんな意図の演出なのかわかりませんでした。
 日本なら、すぐに名探偵の江戸川コナンや灰原哀を連想しますが、エスターは彼らのように頭脳明晰でも冷静でもないので、少し凡ミスもありつつ、必死にサバイブしている印象です。心とからだの不一致という普遍的なテーマがあるし、性的欲求を実現できないという境遇にも同情できるので、やっぱり彼女が殺人者になっていった物語にも興味があります。
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