KnightsofOdessa

あの夜、マイアミでのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
3.5
[マイアミに集いし四人組] 70点

1964年2月25日夜、モハメド・アリがソニー・リストンとの試合に勝利した後の数時間を描いた作品。ホテルの一室にジム・ブラウン、マルコムX、サム・クック、モハメド・アリの四名が集まり、当時の社会情勢から黒人迫害の歴史までを一夜に凝縮するアマプラ版『マ・レイニーのブラックボトム』。少人数の会話劇、実在の人物を基にした舞台劇、など共通点は数多くあるが、最も大きく異なる点は時代だろう。『マ・レイニーのブラックボトム』が1920年代を描いているのに対して、本作品は1960年代を描いており、黒人に対する偏見/差別もそれに対する抵抗手段も格段に増えているのだ。四人組の言い争いなので、基本的には二対二になることが多く、その組み合わせが流動的に変化する、私の好きな『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』スタイルなのでテンポ感も良い。惜しむらくは『Shirley』ほどの緊迫感と窒息感がないことだろう。人間関係の閉塞感よりも社会の閉塞感の方を強調したために、室内での人間関係はそこまで冷え切らず、閉所恐怖症的な感覚は覚えなかった。それが狙いなのは分かっているし、そう描いちゃ駄目なことも分かっているのだが、一本の映画としては少々不完全燃焼。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa