柏エシディシ

あの夜、マイアミでの柏エシディシのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
3.0
モハメド・アリ、マルコムX、ジム・ブラウン、そしてサム・クックが一同に会した"伝説の夜"
アフロアメリカンの歴史上伝説的な4人の対話から、アメリカ社会における人種問題を多面的に語り直すアプローチが見事で刺激的。
これが初監督となる女優レジーナ・キングの演出面での拙さは散見されるものの、
「知ってるつもり」になっていた伝説的な4人物を、文字通りの兄弟Brother同士の様な親密さで活き活きと描いていて見応えがある。

責務と重圧に苦しむマルコムXはさながら四兄弟の長男。
デンゼル・ワシントンが決定的にしたマルコムXにより繊細さを加えたキングズレーベンアディルがイメージを刷新していて素晴らしい(本作の音楽もテレンス・ブランチャード!)
誰もが愛さずにはいられないカシアス・クレイ(イーライ・ゴリー)を末弟とするならば、自身の苦悩を達観しつつも冷静に周囲を見つめるジム・ブラウンは次男坊の様相。
そして、個人的にもやはり1番思い入れがあるサム・クック。
演じるレスリー・オドムJr.が、もうまさにサムそのもので……マルコムが語るボストン公演のシーンは熱いものが込み上げてくるのを抑えられなかった。
このままサムの伝記映画で一本作って欲しい。
60年以上経っても変わらない現実に、サムの祈りの様なA Change is gonna come が今なお鳴り響く。
2020年の時代を撃ち抜くテーマ性を供えつつ、自分たちが巨人たちの肩の上にいる事を新たに見つめ直す意義深く、力強い一本。
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