レジーナ・キングの監督デビュー作。
1964年を舞台に、ボクシング選手カシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)の勝利を祝うために集まった黒人解放運動指導者のマルコムX、有名シンガーのサム・クック、アメフト選手のジム・ブラウンらの一夜のやり取りを描くストーリー。
もとが舞台用の戯曲かつホテルの一室を舞台にした会話劇ということで華やかさはないが、社会派の濃密な作品だった。
オスカーで助演男優賞にノミネートされたレスリー・オドム・Jr.目当てで鑑賞。
ミュージカルもやっているだけあって歌声がとても素敵。(サントラ繰り返し聴いてます。)
シングル曲が全米1位になるほどの実力派のサム・クックでも客席に白人が多いイベントでは黒人というだけで差別・冷遇されること、ジム・ブラウンが友人のように仲良く語らう白人男性相手でも、アメリカ南部では自宅に入ることすら叶わないあたり、当時の差別の根深さや、それがごく当たり前だったことが伝わってきた。
そういった場面を経てのホテルの一室での語らいは、「有名人だからこそ声をあげるべき」という正論と「実際のところ、声をあげたところで届かない」という現状との板挟みが描かれていて切なかった。
他の作品でも存在感を発揮している多くの黒人俳優がキャスティングされていることもあり、展開に派手さはないものの見応えのある作品だった。