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栗の森のものがたりのあのレビュー・感想・評価

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)
3.5
川に木の実が流れてきて始まるストーリーというと、日本人からすると、どことなく桃太郎を思い浮かべます。

しかし、桃太郎のように里山に恵みが降り注ぐ話ではなく、里山の歴史が閉じていく話だったので、より静かな読後感(というか鑑賞後感?)でした。枯れた草の最後を誰も知らないように、消えていく人たちの記憶を曖昧に描いたところが逆に鮮烈だった気がします。

ただ、おとぎ話にもう一本筋を通して欲しかったな...と思ってしまいました。川を流れてきた栗がマリオとマルタを出会わせた、物語の冒頭があまりにもよかったため、その後栗の存在がそのまま川の下流へ流れていってしまったかのように消えていたのには少々勿体無さを感じました。

今年似たような映画に「小さき麦の花」がありましたが、この映画は夫婦が手作りで作った思い出の家が灰燼に帰すところで、ある種圧倒的な物語の終わりを感じました。一方で今作は、冒頭と最後の栗を埋葬するような画で見せたつもりなのでしょうが、途中が栗の森じゃなくても成立する話でしかないように見えたため、普通に栗焼いているんだなー、としか思えませんでした。

印象的なシーンは多々ありましたが、そのどれもが上手く噛み合っていないように見え、予告編が一番素晴らしい映画だったなというのが正直な感想になってしまいます。なんかGettyみたいなサイトで綺麗な画像を何枚も眺めているのとあまり変わらない感覚でした。
あ