ぶみ

誰かの花のぶみのレビュー・感想・評価

誰かの花(2021年製作の映画)
4.0
ただ、家族でいたかった。

奥田裕介監督、脚本、カトウシンスケ主演によるドラマ。
団地のベランダから植木鉢が落ち、住民が死亡する事件が発生、認知症を患う父がやったのではと疑念を持つ主人公等の姿を描く。
鉄工所で働く主人公となる青年をカトウ、母を吉行和子、父を高橋長英、亡くなった男性の妻を和田光沙、息子を太田琉星、介護ヘルパーを村上穂乃果、隣人を篠原篤が演じており、皆日常感溢れる好演ぶり。
物語は、認知症の父を持つ主人公家族が、植木鉢事件が発生したことで揺れ動く姿を中心に描かれるため、サスペンス調で展開するが、その事件の真相は主眼には置かれておらず、予想もしなかった出来事から、突然被害者や加害者といった立場に置かれる人々の心情を淡々とかつ繊細に描いており、どの立場であっても苦しさが伝わってくるもの。
また、エレベーターや団地、はたまたリモコンやタバコといったロケーションや小物が効果的であり、何気ない日常の中に生じた歪みを上手く捉えている。
ただ、クルマ好きの視点からすると、冒頭一瞬登場するトヨタ・アルファードが走り去る時のエンジン音が、同車には設定されていないディーゼル・ターボエンジンのようだったのは残念なところ。
裏を返せば、気になったのはそこぐらいであり、何気ないことから一瞬にして当事者に変わる日常の恐怖と、家族を守ることの覚悟や物事の曖昧さを、圧巻の演技で突きつけてくる良作。

何も喋ってません、なんちゃって。

〜Somebody's Flowers〜

※久々のお一人様鑑賞でした!
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