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誰かの花のmasayaのレビュー・感想・評価

誰かの花(2021年製作の映画)
4.1
その日、風が強かったから起きた痛ましい事故。いくつかの偶然が重なった不幸。それだけだ。なのにどうして心落ち着かないのか。被害者の妻や子に目が合わせられないのか。
ある日突然、家族として当事者になること。その時、当たり前の正義や常識は、簡単に変わってしまうのかも知れない。

老父母が暮らす集合住宅で、ベランダから落下した植木鉢が通行人を直撃して、その人は亡くなってしまう。植木鉢は隣室の住人のもので事件性はない。そう信じたかった。認知症を患う父のその日の行動が、喉に刺さった小骨のように疑念として残り続ける。

家族として、隣人として、当事者になる可能性はいつ誰にでもある。それは絶対的なものではなく、いつでも加害と被害がひっくり返る可能性すらある。そうなった時に、正義心や良心は何をよりしろにするのか。

沢山フックがある割に決定的な掴みどころが無くて感想が宙に浮いたままの不思議な映画だったけど、上りで被害者家族の独白に共感し、下りで加害者の身内である疑惑を突っぱねた、あのエレベーターの場面は心に残り続けると思う。どちらにもなる可能性がある。どちらにも属している。

下関シネマポストさんでの奥田裕介監督舞台挨拶付き上映。横浜の映画館の30周年記念作品ということで、横浜市内の団地を舞台に、監督のご家族の近況をベースに作られたシナリオだそう。まさに、どこでも、誰にでも起き得ること。
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