南森まち

フィールズ・グッド・マンの南森まちのレビュー・感想・評価

フィールズ・グッド・マン(2020年製作の映画)
4.2
これは大変興味深いドキュメンタリーでした。
この映画では自分の漫画のキャラクターがオルタナ右翼の象徴になりヘイトシンボル認定されるまでを、作者・関係者・専門家へのインタビューを交えながら時系列順に追っていく。
最後に光らしきものが見える構成も素晴らしく、「今」見ることに価値があり大変満足しました。

ネットの政治利用の枠組み作りはこれからも更新され続ける課題となる。
特に日本では、webの流行・知識は世代によって大きな差があるので、多くの人に見てほしい。

この映画で取り上げる問題はネットミームと著作権の在り方の課題だ。
端的に言えばこの映画では「作者の主張と大きく異なる事を、キャラクターが行っている」ことが最大の問題となっている。
カエルのペペは大学卒業後に友人たちと遊ぶ負け組っぽさを持つキャラクターだ。この層に現実のオルタナ右翼が多く、カエルのペペに共感を重ねたのだろうと映画内でも分析されている。
仮に作者が同じ主張を持っていればこの問題は起こり得なかっただろう。

この改変転載問題は、日本の同人界隈も同じ問題をはらんでいるが、現状は規制が難しいこととメリット・デメリットを考慮して黙認されている。
ましてや匿名の便所の落書き、インターネット上では非営利個人の模倣を防止することは非現実的であり、これからも表現の自由として生き続けるだろう。

かつて手塚治虫は、テレビで放映される鉄腕アトムに嫌気が差し、みずからアトムを死なせてしまう結末で終わらせてしまった。
現状、作品を世に出すということは批判、模倣、引用されることを覚悟しなければならない。