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ブレット・トレインのRのネタバレレビュー・内容・結末

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2022年のアメリカの作品。

監督は「デッド・プール2」のデビッド・リーチ。

あらすじ

復帰したばかりの「世界一運の悪い殺し屋」レディバグ(ブラッド・ピット「ザ・ロストシティ」)は「ある依頼」を果たすため、東京発、京都行きの東海道新幹線に乗り込む。簡単な任務だったはずが、次から次へと殺し屋たちが乗り込んできたことで、最悪続きの状況下の中、列車はレディバグと殺し屋たちを乗せたまま終着点「京都」まで走り抜ける!

そりゃ、ブラピ主演で殺し屋ばっか出てくるアクション映画、そして、制作スタジオはあの「ジョン・ウィック」シリーズのスタント集団「87North(旧87eleven)」が関わり、監督があの「デッド・プール2」のデビッド・リーチ、しかもなんと日本が舞台!と逆に観ない理由が見つからない映画なわけで前々から観るしかねぇと思ってたんだけど、やっぱ一番観たかった理由があの伊坂幸太郎の「マリアビートル」を実写化した!!ってこと。

伊坂幸太郎といえば日本でも、その作品が何度も映画化されるくらい有名な小説家の一人であり、俺自身も若い頃夢中で読んだ。その中でも「マリアビートル」は過去作「グラスホッパー(こちらも日本で映画化済み)」の続編というかスピンオフであり、個人的に伊坂幸太郎作品の中でも1番好きな作品!

で、そんな作品だからこそ、いずれは日本で実写化して欲しいなぁと淡い期待を込めていたわけなんだけど、それがまさかの海外で、しかもブラピ主演という超ビッグネームの大作に仕上げたというから空いた口が塞がらない。マジで初めてその情報知った時はガセかと思ったもんなぁ…。

そんな感じで、元々休みをとっていたこともあり、公開初日の初回で速攻で観に行ってきました。

ただ、結論としては、うーん…微妙!!

まず、いつも通り良い点から。それこそ海外出資ということでルックは超一級品!!煌びやかなネオンと喧騒で賑わう中、「BULLET TRAIN(日本ではタイトルの「表記揺れ」で混乱する)=弾丸列車」が出発するわけなんだけど、その主な舞台となる列車の中も非常にクリーンで近未来的で、尚且つマスコットキャラの「モモもん」が実際に搭乗していたり、車内ディスプレイで「友」とか「なら、どこでも行ける」とか微妙におかしい日本全面プッシュのカオス状態で、やはり観ているだけでワクワクしてくる!

そして、そんな中で登場するのが数々の個性豊かな殺し屋たち!!主人公レディバグ(小説版では「七尾」)を演じるのはあのブラピ!!風貌はくたびれながらも、そこは世界一のイケオジのブラピだからこそ品があるんだけど、キャラクター的には、ただ任務であるアタッシュケースを運ぶだけだったのに、どんどん殺し屋たちとの「戦い」に巻き込まれていく「世界一ついていない殺し屋」ということで始終「困り顔」なのが微笑ましい。ただ、そんな悪運続きながらも、追手を撒くために扉を「マクガイバー」並のDIYで封鎖したり、その不意をついて逃げ出したり、また殺し屋と対峙した際もなんだかんだでアクションで応戦して、どの戦いも主人公らしく競り勝っているから凄い。「豪に入れば郷に従え」よろしくシーンの端々で「ドウモアリガト」とカタコトの日本語でお礼を言う礼儀正しさも殺し屋らしくなくてイイ。

そして、続いてはヒロイン?というか殺し屋たちの中でもダークホース的なキャラクターである、ジョーイ・キング演じる「プリンス」。ジョーイ・キングといえば個人的には「ホワイトハウス・ダウン」の主人公の娘役のイメージで止まっているんだけど、いつのまにかグングン成長して、今作ではピチピチのJK!!シャツもベストもネクタイも全身ピンクのルックはそれ自体ジョーイの可愛らしさと合ってて殺し屋ばかりの映画だからこそより際立って非常にキュートなんだけど、それより目を奪われるのは服の上からでもわかるその豊満なバスト…。うーん、けしからん!!ただ、そんなキュートな見た目に反してやることは非常に狡猾で、原作版ではこちらも美少年という設定だったけど、女性に改変したことでより、そのギャップがあって良かったのでは。終盤、「ある出自」が明かされたこともより驚きがあって良かった。

他にも真田広之(「モータル・コンバット」)演じるエルターはまさに達人という感じで終盤での剣戟では流石のJACぶりを披露してくれたし、今度のSONYのスパイダーバースでどうやらアンチヒーローのプロレスラーヴィランを演じることも決定したバッド・バニーやホーネット役のサジ・ビーツ(「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野」)のレディバグとのアクションの迫力など、伊坂作品だからこその魅力あふれる殺し屋のキャラクターそれぞれを魅力たっぷりに体現してくれていた。

ただ、やっぱその中でも個人的に1番お気に入りだったのは原作でも1番好きだったタンジェリン演じるアーロン・テイラーイコールジョンソン(「キングスマン:ファースト・エージェント」)とレモン演じるブライアン・タイリー・ヘンリー(「エターナルズ」)!!

原作だと蜜柑と檸檬という「双子(と呼ばれている)」長身の殺し屋だったんだけど、こちらは改変が目立つ映画の中でも特にその影響に晒されていて、なんとレモンが「エターナルズ」でファストス役をやっていた黒人俳優のブライアン・タイリー・ヘンリー。ただ、こちらも原作と同じく無類の「機関車トーマス」好きという設定とあって、会話の端々でトーマスのキャラクターが出てくるんだけど、それを無骨なヘイリーがやってるから微笑ましさも2倍!そして、タンジェリン(タンジェリンオレンジからきてる?)役のジョンソンは原作だと割と冷酷でクールな殺し屋みたいな感じだったのに対して、「コードネームをタンジェリンとレモンにしよう!」と提案したりと割と人間臭いキャラクター像に仕上げてる。2人のユーモア溢れる会話の掛け合いはそのキャラクターの濃さもあってどちらかというとタランティーノっぽさもある。また、原作者以上に2人の「絆」描写も溢れており、原作での「トーマス」の伏線を生かした心理戦だったり、終盤での活躍なんか観ると実質的に1番「オイシイ」役であることは一目瞭然でやはり観ていて非常に楽しいコンビだった。

そんな感じでルック良し、俳優陣の好演良しでそこら辺は文句なしなんだけど、やはりそこで「ノイズ」となってしまうのは外国映画が日本を取り扱う際の「トンデモ描写」それ自体。先ほどもそのシーンの端々で日本フューチャー溢れる内容だってことはわかったと思うんだけど、やっぱ日本人から観ると「え?おかしくね?」と思う描写ばっかで作品に集中できない。

ディスプレイの「文字」も何を伝えたいのかわからない、ただ日本っぽさを出しただけだし、やはりどう頑張っても俳優陣の日本語はカタコト、また東京から京都に列車は直走るわけなんだけど、「え?これってほんとに日本なんけ?」ってくらいどこ映してるのかわからんし、極め付けは京都付近に列車が走ってるし、外にはデカデカと富士山が…笑

あと、劇中、ゆるキャラ的にモモもんって着ぐるみが登場するんだけど、これも日本っぽさを出そうとしている割にはオリンピックのキャラクターみたいでなんか微妙に日本っぽくない。

いや、これが超一級品の「トンデモ日本フューチャー」の作品がだって割り切れば観れるのかもしれないけど、やはり純日本人の観客からすると、どうしたって感化できないレベルのノイズになっちゃうよなぁ、これは。

つーか、エンドゲームでも思ったけど、2022年の国際化社会が進む今でも海外における「日本」ってこういうイメージなんか…。ちょっと残念だなぁ。

あと、原作ファンからすると原作である「マリアビートル」って「舐めてた相手が殺人マシーンでしたモノ(©️ギンティ小林)」でもあるんだけど、原作から改変されたレディバグやエルター(原作では普通のおじいちゃんだけど)って演じるのがブラピや真田広之だからどう見ても「ただモンじゃない感じ」が出ちゃっててイメージと違う!やっぱ、ここはどう見ても優男な俳優さんとか使う方がキャラに合ってたんじゃないかなー。あとタンジェリンとレモンのコンビを演じた2人はイメージとは違いつつも文句ないんだけど、やっぱもっと「トーマス描写」が欲しかったかも。原作だとトーマス好きの殺し屋ってとこに画期性があったからこそ、終盤での展開でトーマス、もっと言うと無駄口ばっかのレモンに対して興味のないように見えていたオレンジが実はレモンに影響されてたって部分が「熱い」要素となっていたんだけど、そこが今作だとちょっと弱めでカタルシスに欠けていたかも。

総じて、個人的には原作のキャラクターの濃さには劣っていたように感じる。

あと、アクションも「87North」が絡んでいる割には控えめ。前半は会話パートやあってもキャラ同士のゴタゴタばっかでアクションはちょっとしかないし、終盤のせっかくの大ボス、ホワイト・デス(マイケル・シャノン「バッド・ジョブ シカゴ・セレブ強盗団」)率いるヤクザとの大立ち回りも列車内という狭い舞台が逆に仇となってしまってアクション性に幅が出ていない。確かに真田広之の剣戟やそこでかかる日本で有名な「ある曲」がかかったシーンはぶち上がったけど、それも一過性でもうちょいアガるアクションを見せて欲しかったなぁ。

ただ、まぁその終盤のアクションも「ある程度」は満足できたし、列車転覆シーンの迫力だったり、まさかの「あの俳優」のカメオシーンの驚きもあって、まあまぁ楽しめたかな。

ちなみに6月に公開された「ザ・ロストシティ」を観とくとリンクする部分があって、より楽しめるかも。

個人的に思うのは、全部が全部海外実写化されても希望通りの面白い作品…とまではいかないところ。やっぱ今作に限って言えば日本人監督による邦画の方が良かったのでは?同じ「ブレット=バレット」繋がりで現在公開中の「グリーン・バレット」で日本アクションの新たな担い手として名高い阪元祐吾監督とか適任なんじゃないかな。

そんな感じで日本人で尚且つ原作ファンの俺からすると、事前に期待値を上げすぎたこともあり、「なんだかなぁ…」って感じでだったけど、確かに原作も読んでいない海外の客層からすると大いに楽しめる内容にはなっているのかも。

ただ、「対日本人」からすると評価は賛否両論起こりそうな感じで、結構大々的に宣伝した分、日本の観客の注目も高まっている今、海外と日本でどう評価が分かれるのか非常に興味が湧く作品でもありました。
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