Natsumi

浅草キッドのNatsumiのネタバレレビュー・内容・結末

浅草キッド(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

晴天の霹靂同様、
ストレートな人間物語。

大泉洋が入ることで
人間味がぐっと奥深くなる。
なんとなく寂しそうにする
大泉洋の眼が好き。


タケシが舞台からテレビに
居場所を変える流れが印象的。


コントの準備で鳥に餌をやり忘れて
「客はあんたのコントじゃなくて
私たちの裸を見にきてんの」って
怒られて、
トイレの掃除中に
そのことを生々しくも思い知る。

あぁ、何かが変わるんだなって
思わせるあの異様に丁寧な
トイレの描写のあとの
師匠への報告の場面。

「てめぇいつからそんな
面白いこと言えるようになったんだよ」

「師匠に教わったんで」

このやりとりが
正直羨ましかった。

師匠への愛と信頼はあるけど、
感謝はしてるけど、
もうここが辞め時ですっていうことを
お互いがお互いにわかっている感じ。


逃げるんじゃなくて辞める、
相手を嫌いになったわけじゃなくて
自分が成長してしまったから離れる、

そうやって居場所を
変えていける人になれたらな。

一度夢を諦めた千春が言う
「帰ってこないでね」も
追い打ちをかけるように泣かせてくる。


時代が変わっていて
明らかに堕ちてしまっても、
弟子の前では、
身なり整えて、偉そうに喋って
強い師匠のままであり続けたところも
よかった。

いきなり謙虚になったら
興ざめするもんな。

変わってく時代の中で
頑固さを生涯貫くってすごいよな。
かっこよかったです。


鈴木保奈美さん
あんまり演技は知らなかったけど、
今回の映画で、
佇まいとかひとつひとつの所作に
惚れ惚れしたし、

「舞台に立ってるあんたが好きやわぁ」
って色っぽくて我慢強くて優しくて。
ハマり役でした。



お葬式でも、居酒屋でも
どんな場面でもおもしろい話に
転換できないか考える、
芸人ってめちゃくちゃストイック。
気分屋の一般人とはやはり一線を画す。


全ての頑張る芸人たちよ、
勝手に見下してくる世の中に対して、
「芸人だよ、バカヤロー」
って言い返し続けてくれ、
と思いながら見てました。
Natsumi

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