邦題は『さよなら、僕のビー玉』
ユダヤ系フランス人ジョゼフ・ジョッフォが第二次大戦中に経験した自らの戦争体験を綴った原作の映画化。
『ヒトラーに盗られたうさぎ』を筆頭に既視感は随所で感じるけれど、実体験に基づく説得力と子供の視点で描くユダヤ人迫害の悲劇は、やはり居た堪れなさが倍増する。
黄色い星のワッペンとビー玉を交換するシーン。子供の目には本来同じ興味の対象でしかない2つの隔たりがあまりにも辛い。
ナチスからの逃亡の過酷さ、容赦なくハラハラするシーンは息を飲んだ。たくさんの偶然と出逢い、兄弟の絆の強さをもって辛うじて生き延びて来たけれど、根っこにある生きる力は、父が全身全霊で教えたあのシーンに凝縮されている。そういう意味では紛れもなく究極の親子愛を描いた名シーンだと思う。
少年らしい淡い恋の場面はキラキラ眩しくて美しい。だからこそ非情な銃殺シーンとのコントラストがあまりに辛くもあった。
パリ解放で全てが一瞬で元通りなるはずも無く、立場逆転からのクライマックスでの少年の成長ぶりには鳥肌だった。ピュアさ或いは人間性が際立つシーンに圧倒された。
通して明暗を効かせた映像表現で綴った過酷で濃密な2年半の経験が、望む望まないに関わらず大きく成長へと繋がったと思うと複雑でもある。
因みに1974年ドワイヨン監督『小さな赤いビー玉』で既に映画化されており、そちらもいつか比べて観てみたい。