このレビューはネタバレを含みます
【吉尾は青春へのそのもの】
とても味のある俳優さんが揃っていて、アラサーと高校生という役柄を、違和感なく演じられてたと思う。
主人公の吉尾が実は死んでいて、ちょっとした言葉や行動で、その友人たちの過去の記憶が呼び起こされていく。
現代から過去へ、最後の場面と、
役者さん達の演技が、もの凄く良かった・・・・
だからこそ、本当に、途中が勿体ない・・と思えてしまう。
途中・・・・そう、
心臓のシーン。
これ、好きな人には好きな展開なのかも知れないけど、コミカルでシュールで。
けれど、私は、「そんな事せんでええんやで」と思ってしまったよ。
この場面が悪いワケではなく、その前後とのバランス。
つまり、その前後が、良すぎた。。。。
良すぎたから、完全に、その心臓のシーンが浮いてしまっている。
話の流れ的に必要ならまだしも、
全く、必要ではない、不要な場面であるところに、
「わざわざ、なして・・・・」と首をかしげるしかない。
この作品を、まっとうな青春モノにしたくはない。変わった作風にしたい。
普通でない、特別感が欲しい・・・という、妙な意図を感じてしまうのだけど。
この素敵な作品を、ぶっ壊す悪趣味な方法だったと思えてならない。
心臓のシーンを入れなくても、
この作品は、変わっていて、シュールで、コミカルで、泣ける作品だと思うんだけど。
勿体ないなぁ・・・・・
まぁ・・・でも、これは好みなのかも。
人間の頭ン中なんて、こんなモンで。
色んな感情が入り混じったら、こんな世界になってるのかも知れない(笑)
でも、友人たちが、何故、死んでしまった吉尾を受け入れたか、
キミエが何故、死んでしまった吉尾の突然の出現をすんなり受け入れたのか。
死んでいるはずの友人を、普通に受け入れて、「いい加減成仏しろよ・・・くれなずめよ」という軽口にこそ、
シュールさとコミカルさと、特別感が、詰まっているように思えるのだが。
最後のシーンで、最後に6人で会った日を、やる直す場面が、素晴らしく良かったなぁ・・・・
悲しくて、懐かしくて。
そして、精一杯、別れ伝える。
変えられない運命ならば、全身全霊でさよならを言う。
その切なさに、泣けた・・・・。
人生において、ケジメのついていない事、
心につっかえている事、白黒ついていない事。
そういう事が、日常の中のふとした瞬間に、舞い落ちてくる事がある。
人を亡くした時には、死んだ側ではなく、残された側が、
いつまでも、踏み出せないでいるのかも知れない。
死んだ吉尾の姿がいまだに見えるのは、
吉尾が未練があるワケではなく、残された自分たちにこそ、その理由があったのだ。
そう気付くまでの過程は、リアルで、切ない。
いつまでも、うじうじするな・・・と。電話を取れなかった事と、
自分の死は関係ないのだと、吉尾は伝える。
そして、新たな日々が始まるワケでもない。
彼らはまた、同じ日々を過ごしていく。
残された人間でわちゃわちゃしながら。
そして、また、ちょっとした一言・行動で、吉尾を思い出す。
いくつになっても、どんなに年をとっても。
それが、青春というものかも知れない。
吉尾は、彼らの青春の1ページに、大きく刻まれたのだ。
・・・という事で。
私はいつも、世間の評価良いものにケチをつけるパターンが多いけど、
珍しく、今回は逆パターンでした。
評価あんまりみたいだけど、
私は好きやけどなぁ・・・