フクイヒロシ

TOVE/トーベのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)
4.5
ムーミンを宝とするフィンランドから
「これでも喰らえぇっ!」と放たれた鉄の矢のような映画。


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ムーミンファンの方からすると「ムーミンは金のために嫌々描いてたの!?」と残念な気持ちになる側面もある映画ではあるかも。

でもきっと
「ずっと好きだった作品を作った人のことがよく知れて良かった!!」
って人もいることでしょう。


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僕はムーミンもそんなに知らない(子供の頃にアニメ見たことはあるはずだけどどんな話かは知らないし
トーベ自身についてもそんなには知らない。

大人になってから、トーベが女性と島で二人暮らしをしてたというのは聞いたけど、それもなんか童話作家っぽいなと思っていた程度でした。


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この映画がどれほどトーベ自身を描けたものなのかはわからないけど
トーベの大きな側面が切り取られたものなのだろうと、予想します。

この切り取られたものは、今までそんなに公にされてこなかったことなのでは。
逆の意味で「切り取られて(隠されて)きた」ものなのでは。


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主演のアルマ・ポウスティの演技が素晴らしい。実在感が素晴らしい。
トーベ・ヤンソンのルックスをそんなに知らないってのもあって本人のように見えて来た。

女優だけでなく監督もされているんですね。

人間臭さ、強さ、弱さが素晴らしい。


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美術も良かったです。
絵の具の匂い、カンバスの匂い、床板の匂い、天井の高いアトリエの中をめぐる風の匂い。

そういえばほぼ室内でしたね。
凄い決断。

なんかすぐ森とか散歩しそうなのに。しない。

(日本の映画やドラマはすぐ土手を歩いたり橋を渡る。毎回どこに住んでんだよ。)

川べりを散歩するけどめちゃくちゃ夜中で真っ暗。

ラスト踊る人物も逆光。

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鉄の矢でした。
なめんなよ、と。