準受験生

劇場版 ルパンの娘の準受験生のネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 ルパンの娘(2021年製作の映画)
1.2

このレビューはネタバレを含みます

この先色々いいたい放題してますので見たくない方は見ないほうが良いです











なんっっっだ、この、クソ映画!!!!
酷い、余りに酷すぎる!!人生で見た中でも上位のクソ映画だ!!ドラマではコメディの馬鹿馬鹿しさでゴリ押して中和出来ていたけれど、この映画は駄目だ、ひどすぎて。中和はおろかギャグが返って浮いて空虚感を演出してしまってる。ひ、酷い。酷すぎる。
この映画の致命的問題点は、怜、こいつの作中での扱いにある。なんでこいつをシンプルな悪役にしてしまったんだ?愛する夫を殺され、憎しみの余り凶行に走り独房行きにされた女。それだけで十分なストーリー性がある。
復讐に燃えるも、寸前で身内に警察に突き出された。何年間も独房に入れられる。やがて彼女は、L一族を恨み始める。←そう、ここまでは分かる。ただ、この映画の欠陥は、その怒りのベクトルが、『復讐に水をさされ、愛する娘との時間さえも自分から奪ったこと』ではなく『L一族の掟を破り、自分から一切の自由を奪ったこと』に向いていることである。違うだろ!!!!!
そう、この話、三雲怜像が過去と現在で乖離しているのである。過去編では『家族愛に溢れる故に』凶行に走った女、現在では『自分から自由を奪った』ことの憎しみに燃える自分本位な女として描かれている。独房入れられて人格変わったんじゃねえの。これ。『復讐に水をさされ、愛する娘との時間さえも自分から奪ったこと』に重点を置いてストーリーを展開すれば、もっと深みのあるキャラクターになったのに、変に自分本位のキャラクターに書き換えられてるせいでとんでもない破綻が起きている。過去編なら『夫と娘のため』復讐に走った筈なのに、時間が進んで見れば、『自分のため』あろうことか娘をL一族と一括りにして、殺そうとしてるんだから。なんでや。怒りの向きが劇中通りじゃなければ、「娘から『本物の』家族生活を奪った怒りから娘の手によって『育ての親』、いや、『仮初の親』の命を奪わせ、自分との真の家族生活を取り戻すよう迫る」なんて、そこそこ壮大で面白そうなストーリーが組めたはず。家族との時間という取り戻すことのできないものを『奪った』泥棒共への、かつて泥棒を辞めた女としての怒り。産みの親と育ての親、2つの家族同士の闘い。そんな家族劇がその世界線には少なくともあった。なのに……。制作者のキャラクターの無理解が極まったせいで薄っぺらな展開に成り下がっている。さらに、この女の人格改変の影響は他の人物にも及んでいる。
まずは育ての父。此奴は怜を『盗みの為には人殺しも厭わないL一族の面汚しの大泥棒』と見なし、彼女の存在自体をなかったことにし、さらにはその娘から、本当の母親と過ごす時間さえも奪った。しかし、何度も言うように、彼女が復讐をするときは、夫や娘への愛情があったにも関わらず、それを全くもって無視し、このような評価をしている。じゃあ檻から出たあと、彼女の悪い噂を風に載せられて耳にしたのかというと、そうでもない。この親父共は、牢屋に出たあと怜がどんな生活をしているのか、一切知らなかったのである。さらに彼女が牢屋に入る時、彼女は夫を殺した者への復讐以外、一切罪を犯していない。即ち、これが何を意味しているかというと、この親父は怜の復讐を『自分勝手な家族愛のない行為』と評価しているからに他ならない。相当ズレた解釈で、こいつは怜を牢獄に入れるようしむけたのだ。ひ、酷い……。
華も酷い。父からまあまあやばいことされてるのに、そのことについて一切怒る気配がない。テントウムシが夫の殺害を食い止めようとする時、やっと動いたか、と思えばアンと和が失われる事への危惧。嘘だろ。この女、実の母との時間を奪われた事への怒りが一切ない。もっと怒れよ。ふざけんな。
その後も、華は実の母を最後まで『お母さん』とも『ママ』とも呼ぶことなく、『貴方』と言うに徹している。どこか憐れむような目線で彼女と接している。華の中で、怜が母親になることは金輪際もうないのである。おかしいだろ!少なくとも、『私の中で貴方が私の母親になることはない。ごめんなさい。でも、貴方がいたから私は沢山の人に出会えた。和くんと出会い、アンが生まれた。素晴らしい時間を過ごせた。だから、私を産んでくれて、ありがとう。』そう言うべきじゃないのか。なのに華ときたら、怜にいつもの憐憫マシマシの視線を向けるだけ。クソみたいな脚本だなマジで。
それどころか育ての父にあろうことか日々の感謝を伝え、見せかけのハッピーエンド、めでたしめでたしさあ解散。ふーーーっっざけんな。華、お前がすべきはまず、真実を告げてくれなかった怒り、家族の時間を奪った怒りをこのクソ親父にぶつけることだ。そして、散々喧嘩してから、それでも貴方が私を育ててくれたことは感謝してる、今までありがとう。そう伝えることだろうよ。
渡も渡だ。渡は親父に対して怒りを向けているが、それはあくまで『華と和とアン3人の幸せを奪ったこと』に対してであって『怜達一家の時間を華から奪ったこと』ではない。イチイチズレてんだよこいつら。だからどのシーンもスッカスカで滑稽に見えてしまう。
そして橋本環奈!!!!同情如きで親父を殺されたことへの怒りは消えるのか?お前の怒りはその程度なのか?あぁ?あれだけLの一族殺してやるとか言ってたのに、あのTVシリーズの時間は一体何だったんだ!俺達はワンクールもの間何を見せられてたんだってばよぉ!!!!!!!教えてくれよ!!!!!!!

強いて良かった点を挙げるとすれば、演出。明らかに狙っただろうなっていう分かり易いギャグ部分はカスストーリーで浮いて悪目立ちしてたけど、ウケを意図してないだろうなっていう演劇チックな演出はところどころ吹いてしまった。特に、怜が爆弾解除機器の前で華に立ちふさがると、不意に後ろのライトがバンってつく所。人感センサーついてんのか。不意打ち過ぎてわらっちゃったよ。

まとめ)この作品は展開がガタガタすぎて、コメディでも擁護できないほど大きな破綻を起こしている。母(生み)は牢獄に入れられた結果謎の人格改変が起こり、父(育て)は見当違いな理由で話も聞かず怜を警察に突き出した挙げ句、娘から本当の家族との時間を奪い、おまけに怜の存在を家系図から抹消し、娘はというとそれに対しなんの怒りも沸かず、あろうことか母に生んでくれたことへの感謝ではなく憐憫の眼差しを向けた。なんでそうなる……。何度も言う通り、これは怜の人格改変が諸悪の根源である。彼女のL一族への復讐の理由を『夫への復讐に水を差し、(以下略)』に書き換えれば、泥棒×元泥棒、本当の家族×育ての家族、そのどちらを選ぶかという、中々重厚なストーリーが出来上がる筈だ。しっかしなぁ………。責任者呼んでこい。
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