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時の面影のpenのネタバレレビュー・内容・結末

時の面影(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

イギリスのサットン・フーで実際にあった遺跡採掘の功績を基にした映画。時代は1939年のドイツとの戦争開戦間近の頃。次第に戦争の影響が色濃くなり始める中、多くの人が発掘に力を注ぐ。

静かで端正な作品で「地味では」と云われたら正直何もいえないのだが、役者陣の手先や表情の細やかな演技が見せる人間模様、雄大な風景のもとに行われる遺跡の採掘が、ずっと観ていられた。土の中に埋まっていた巨大な墓がどんどん姿を現し始めると、様々なものが出土し始めるんですね。そこからこれが何時代のものなのかが明らかになってくる。歴史を解き明かす為の第一歩としてとても重要な作業。それを見ていると知的好奇心がくすぐられて、いま新発見の現場に立ち会っているような昂りがありました。登場人物の一人である少年が土に埋まった船にワクワクしながら同時に宇宙へロマンを馳せる。人間は常に未知の場所、未知のものに憧れる気持ちを持っていることを考えさせる。


少し霧がかった陽光が照らす世界を捉えた映像がとても美しい。一方で、霧や雲の向こう側から飛んでいく戦闘機が、美しさの裏側で忍び寄る戦争の影を感じさせる。そのシルエットすら映像の中では綺麗に見えるのだけど、実体を伴って近付いてくると「死」の恐怖が明確になってくるのが怖くもあり。この映画には常に死が付きまとっていて(キャリー・マリガンが一番それを背負っている)、それは避けられないものだけれど、ではその時が来るまでに後世に残せるものは何かあるのか? といったことも描いていたように思う。そこが遺跡から出土される品々と現在に残されるものが結びついてきて印象的だった。
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