飴

キャラクターの飴のネタバレレビュー・内容・結末

キャラクター(2021年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

典型的なB級サスペンス邦画。グロさや刑事のバディ感をとりあえずくっつけとけばいいみたいな安直な浅さがあった、が、ぶっちゃけそれを承知で「B級のサイコホラーが見たい」という気持ちで見に行ったので不満はない。期待はしてなかったので。
まず、伏線が浅い、というか雑。
主人公(山城)のキャラクターの掘り下げが浅くて感情移入できない。「四人家族への憧れ」という山城の設定が活かされてる感じがない。多分その漫画を模倣する犯人(両角としておく。本当の名前がないから呼びづらい。)の動機付けに必要だったんだろうが、後付け感が否めなかった。山城のキャラがブレていたがために、山城が両角に出会って自白を決意するシーンも、家族を平気で囮に使おうとするシーンも、両角を笑顔で刺すシーンも、キャラの一貫性がないし突然過ぎて理解ができない。山城は「悪人が書けないくらいいい人」だったはずでは?作中で描きたいことはわかるけど辻褄が合ってない。
次に、清田刑事の死の必要性はなかったと思う。山城に最終回を描かせる動機付けだと思うが、正直他にもっと自然な展開があったと思う。そもそも清田を殺した辺見についても掘り下げが浅すぎる。というか辺見は必要があったのか?恐らくラストで「まだ悲劇は終わらない」エンドにしたかったからだと思うが、要らない…そのために不自然に加えられてる感じがする。無駄死にでしかなかった。山城も知ってるような情報を中村獅童に伝えるだけ伝えて死ぬなんて本当に無駄死にが過ぎる。せめて死の間際に証拠を掴むとかさせないと…。(清田を演じる小栗旬が好きだから清田が死んだことに立腹してるわけではない。)蛇足という話で言えば、清田が族上がりであるという設定も必要性がよくわからない。最後まで「…だから?」という感じだった。
細かい指摘を加えるなら、中村獅童が演じる刑事、キャスティングが違う気がする。もったいない。中村獅童のインパクトに対して本人が特に何もやってないのでギャップが目立って良くない。せめて見せ場が欲しかった。もしくはもう少し存在感のない俳優にするとか。
あと、あんだけ監視カメラの映像を見てるはずの清田が歩道橋の上の両角を見て首傾げてるのは何…?お前の目は節穴か…?
脚本全体を通して、悪い意味で展開が読めない部分が多かった。不自然なところが目立っていて、「いや、そっち…?」と呆れてしまいだいぶ興醒めしてしまった。
山城の子供が双子になるのは序盤で両角が4人家族の話をしてた時点で察したが、まあわかりやすいフラグが立っても面白い映画(セブンなど)はあるのでそれは黙認。

ここまで悪いところばかり語ってきたが、ちゃんと良かったところもある。
両角役のfukaseの怪演である。正直期待していなかった。彼はただのアーティストだし、見ていられない演技じゃないことを祈ろうというくらいの気持ちだった、が、本当に期待を裏切ってくれた。というか、あまりの出来上がり方に、今後のfukaseのイメージに支障が出ないか真剣に心配になるほどであった。とにかくすごい。目つきや喋り方、首の動かし方まで狂人そのもので、存在自体が「不穏」を纏っていた。登場シーンと、車内で家族と喋るシーンは本当に怖かった。彼の演技なしではこの映画はBどころかD映画だったと思う。拍手。
それに対して、(また悪い話になってしまうが)菅田将暉の演技が正直微妙だった。彼は役柄によって名演をしたり残念だったりの差が激しいが、今回は残念。棒読み感が否めず、感情がこもってるように思えなかった。山城のキャラが掴めないのもそれが原因かもしれないし、なんなら菅田将暉自身が山城のキャラを掴めずに演技が迷走した可能性もある。fukaseが良かっただけに、残念。

まあ諸々良くはない映画だが、ほどよくグロくて軽めなサイコホラーが見たい人にはおすすめ。こんだけ悪評を書いたが今日の私はそういう気分だったので割と楽しめた。

余談:山城が自白したあたりから興醒めしていたものの小栗旬を見て小栗旬の声を聴くことだけを目的に見続けていたのに、途中で滅多刺しで殺されて本当に落ち込んだ。小栗旬ともあろう人が映画の途中でぽっと出の雑魚に殺されるなんてつらい。でも刑事役の小栗旬はやっぱりかっこいい(BORDERしかりCRISISしかり)と確信したので次はミュージアムを見る。Yシャツぱつぱつの小栗旬いいよね!!
飴