カズミ

キャラクターのカズミのネタバレレビュー・内容・結末

キャラクター(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

公開当初から気になってはいたものの、グロ耐性が極端にないため、長く見るのを渋っていた。でも、友人から何度もおすすめされるし、出演されている方々が好きな人ばかりなので、意を決して視聴。
結果、トラウマになるかと思った。

狂気的な犯人が出ることは知っていたが、惨劇後の描写があまりに生々しく、目を覆いたくなるレベル。個人的に刃物系の痛みが一番苦手だからかもしれないが、画面を覆う赤黒さに何度も力が抜けそうになった。
犯行に及ぶ最中のシーンがなく、仲睦まじく生きていたはずの家族が次のカットで一転、無惨な死を迎えているところが、むしろショックを与える演出に効果的に働いているように感じる。

そして、散々言われていることだと思うが、Fukaseさんの演技が怖い。
目が死んでいる、という表現があるが、それとはまた違う、終始目で人を殺めているような得体のしれなさ。あれで初演技とは、アーティストの本気を身に焼き付けられた気分である。
好意から森で声をかけてくれる家族に対する「大丈夫じゃないです」「──乗せてもらっていいですか」の声の出し方が鳥肌ものだった。両角の異常さが一目でわかる。

と同時に、最後の対決のシーンでは、山城の作品に対する狂気が浮き彫りになる。
異常な体験をしてなお、漫画家になるという夢を捨てきれず、そのトラウマというべき出来事を作品にまで昇華させた。犯人逮捕、という名目があるとはいえ、家族を巻き込み、果ては自分の命をも犠牲にしようとする。
エンドの、おそらくは辺見に狙われているであろう奥さんと、その後の不快なSE。明言すれば、あまりに後味が悪くなるので、視聴者の感性に委ねられた感はあるが、あのまま平穏に暮らしましためでたしめでたし、の展開はどうにも違和感を覚える。
触れてはならない領域に足を踏み入れた者への罰(という言葉はあまり好まないが)が待ち受けているのでは、と身構えてしまう。

映像作品として苦手な描写が多々あるのは確かだが、それがあっても最後まで惹きつけられる仄暗い没入感があった。
シリアルキラー系のサスペンススリラーが好きな人には、おすすめできる映画だと思います。
カズミ

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