もの語りたがり屋

BLUE/ブルーのもの語りたがり屋のレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
3.6
単なるボクシング映画ではない。優しさと強さの物語

一生「青(ブルー)コーナー」=挑戦者でありながら、ボクシングに打ち込み続けた男の生き様に胸を熱くする。

ボクシングが中心ではあるが、試合にも恋にも勝てない男の内に秘めた深い情、勝ち続ける男の止められない熱い思い、強くなろうとする男の変わっていく心、大切な人を想う女の愛情、誰もが誰かのために生きる優しさと強さが滲み出る作品。

どこか淡々と進むのに、どんどん惹き込まれていく展開。
BGMを敢えてなくしていることがボディーブローのように効いてくる。脳に損傷を抱えた小川が朦朧としていく視覚効果も相まって、いつその時が来てしまうのかドキドキが止まらない。
ただ最後まで引っ張った結末の余韻に浸れるか、もの足りなさを感じるかは賛否両論分かれるところだろう。

ボクシングシーンは迫力があるというより生々しく手に汗握る。スパーリングや試合のシーンの割合が多いため、そのリアリティさは重要な部分。

無音を効果的に使い、手ブレの撮影技法を巧みに操るのは『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督らしい演出だ。