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SLEEP マックス・リヒターからの招待状のzshのレビュー・感想・評価

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ベストセラー「意識は傍観者である: 脳の知られざる営み」の著者として知られる脳神経学者デイヴィッド・イーグルマンの助言を得て、リスナーを眠りに誘い、実際に眠っている間も聴き続けるために書かれた画期的な作品、単一の楽曲としてはレコーディング史上最長と言われる8時間におよぶ眠りのための音楽『SLEEP』はマックス・リヒターが2015年に発表したアルバム。
夢のような美しさと、やすらぎに満ちたサウンドは激動の世界に捧げる子守歌と評されている。

真夜中に始まり、朝方に終わる。
"眠り"をテーマにした8時間に及ぶライブパフォーマンス。音楽と睡眠を融合させることで観客を新しい音楽体験に導くSLEEPのコンサート。
LAグランドパーク、シドニーのオペラハウス、アントワープの聖母大聖堂、パリ、ベルリン、NYなど世界各地の会場で開催され注目を集めてきた。

映画はグランドパークで行われた野外公演を中心に、リヒターや公私に渡るパートナーであるユリア・マーへのインタビューを軸にSLEEPの魅力を解き明かしていくが、同時に様々な思いを抱きライブに参加した観客の内省的な体験も描き出していく。

自身も映像作家であるユリアの慧眼により抜擢されたナタリー・ジョンズの繊細な演出が光る。美しいカメラワークや深夜の街並みを写したインサートショット、会場を包み込む瞑想的なムードを捉えた映像がSLEEPを擬似体験させる。

リヒターとユリアの出会い、ユリアが提供した15年に渡って撮りためていたリヒターや子供たちの貴重なプライベート映像。
苦難の日々を支えあったリヒターとユリアの深い絆、家族への想い、そんな中でも決して曲げることのなかったアートへの強い信念と音楽への真摯な姿勢。
「彼は繊細だけど音楽に関しては大胆で、繊細さを見せることを恐れていない」というユリアの言葉は、リヒターの音楽を的確に表現している。

終盤長尺で見せてくれるACME(クラリス・ジェンセン、ベン・ラッセルをスクリーンで観れるだけで嬉しい)との演奏には鳥肌が止まらないし、グレイス・デイヴィッドソンのソプラノヴォイスはまさに天使の歌声と言っていい美しさ(来日時に聴いた声はまさに衝撃的だった)。
レコーディングシーンではユキ・ヌマタ・レズニックの姿も見て取れる。

2019年15年振りとなった来日公演で実現ならず幻となった日本でのSLEEP(振替となったThe Blue Notebooks、Infraアジア初演はこちらはこちらでとんでもなく素晴らしかったのだけど)
いつの日か日本でも実現されることを心待ちにしたい。

【余談】
SLEEPの美しいアプリがApp Storeで配信されてるので興味のある人は是非ともDLをおすゝめし〼
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