蛸

Mr.ノーバディの蛸のレビュー・感想・評価

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)
3.9
「舐めてた男が殺人マシーンだった」系の映画は、ともすれば単にマスキュリニティの復権を表現して終わってしまいます。

銃や車、そして何よりも「暴力」に託された男性性の復権は、そこに+αとなる何かがなければ、旧態依然とした「男らしさ」の制度を維持するためのものにしかならないでしょう。
この映画においては、主人公が暴力を振るう動機の薄さがそのような印象に拍車をかけています。八つ当たり的な暴力の発散を肯定するための描写があまりにも薄いのです。

とは言え、単調な日常を極めてテンポ良く描き出すオープニングシークエンスから、極めて生々しい暴力描写、ポストTPS的なガンアクションまで、90分の上映時間の中で見るべきところは多いです。
しかし、例えば、『イコライザー』などと比べると決定的に深みが足りないと言わざるを得ない作品だと思います。
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