まず、ミステリー・サスペンスとして面白いのが素晴らしい。
ちゃんと全員が容疑者になるような要素をスムーズに示していき、ダイイングメッセージに関しても全ての人物が当てはまるようになっている。そこにクレしんらしさとアニメだからできる表現なども取り入れて、古典にオリジナリティを入れ込むという抜群の出来。
そこに優勢思想のテーマと、“終わり”の来る人間関係というテーマを組み込み最終的にはすごくパーソナルな話に落とし込むという構成。
これがまた見事で『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』などの“終わりが来ない”作品だからこそ強く際立つ時間の有限性と、人としての変化(成長)を優しく見守る視点。
それはいずれ来る“別れ”の予感、あるいは過去に通った“別れ”の肯定となる。
さらにお馬鹿が愛される『クレヨンしんちゃん』という作風そのものを活かして優勢思想に対してのアンサーを成り立たせているんだからやっぱり素晴らしい。
『オトナ帝国』や『戦国大合戦』と並ぶ傑作と評されるのもよくわかる。