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ハウス・オブ・グッチのcinecoroのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.3
グッチのお家騒動など全く知らなかったし、グッチブランドに触れたことも入ったこともない超平民の私だけど、『最後の決闘裁判』のときに流れていた予告を観てから絶対観たいと楽しみにしていた。
何よりレディガガをリドスコ翁の映画で観る日が来ようとは…
開始5分程で至福の"これ面白い”の予感で満たされる映画体験をまた味わってしまった…映画ってほんとに良いもんですね……

人間たちの大いなる悲喜劇をグッチ家の物語を拝借してオペレッタ的な装飾で上演してみせたとでも言おうか。まあ利用される方はたまったもんじゃないと思うけど…
音楽の軽薄な使い方もジャレット・レトの道化的な立ち回りも全てが舞台装置となって、距離を置いて客席から観ている我々を笑わせる。アルドとパウロのひなびて寄り添う感じ、良かったなあ。

メンツ的にも物語的にも超パワフルで最後まで完走してくれるのですぐ眠くなっちゃう身としては助かる。どんどん派手になって成金趣味的なパワーを身につけていくパトリツィアは見ているだけでも疲れるんだけど(後半の白婦人との意地悪な対比!)レディガガが演じることで、女の遊びじゃないんだ、よそもんは引っ込んどれと押し戻されそうになる度にエンターティナーとして体張って生き抜いてきた彼女の髪の毛が逆立つような怒気を感じるので、この辺もうちょっと尺取って観たかった。マウリツィオとの距離が離れつつある中での上流階級のやつらの中にビンビンに見栄張って踏み込んでいく彼女の痛々しさも、家族アルバムを持って情に訴えようとする愚かさも全部、観ているこちらは助けて〜となるくらい居た堪れないのだけど。
あとやっぱりアダムドライバーの上手さ、ぬぼーとしているのにエレガント、徐々に金と欲に呑まれていってるのに本人の自覚なし、というお間抜け加減を絶妙な存在感で嫌味なくやってのけた。最高。
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