える

劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―のえるのレビュー・感想・評価

3.7
僕にとって久米田康治といえば『かってに改蔵』に始まり、青春を共に過ごした『さよなら絶望先生』は全巻集め、『じょしらく』をアニメで観た程度のにわかファンではあるが、画業30周年記念ということで記念鑑賞

この歳になるともう家族ものはダメですわ。泣いちゃう。

久米田康治って、描く漫画になんというか…人生の酸いも甘いも経験してきたんだろうな…っていう、作品自体の奥行きに加えて作者自身の人生の奥行きも感じて妙にリアリティがあるんだよなぁ。特にコンプレックスについて大きく取り沙汰されることが多い印象。作者自身がそれとどう向き合っているのかを窺い知ることができる。

作風自体も自虐とか風刺とかタブーとか、コメディなんだけどだいぶブラックに偏ってて、そんなこと描いて大丈夫なの?と読者がヒヤヒヤする場面も少なくない。だけど、久米田作品がただのブラックユーモアの漫画で終わらないのが、登場人物達が自分のコンプレックスだとか世の中の不条理だとかに対してネガティブにならずに、悩むことはあれどあくまで明るく前向きに、ときに受け入れ、ときに一喝し、ときに変な風に解釈し、それらときちんと対峙するところである。作者の人生の奥行きは全部ここに表れる。人生における良いイベントも悪いイベントも、逃げずに付き合って自分なりに消化してないとこんな風にはきっと描けない。

映画の感想としては、途中の名場面集カット割みたいなシーンまで総集編ってこと忘れてたぐらい冒頭から引き込まれた。僕は本作に関しては原作もアニメ放映も知らないので、登場人物が急に増えてこの人誰?ってところもあった。上映時間もやや短いものの、100分しょーもない脚本の映画観るよりはよっぽど笑いあり感動ありで充実感はあった。観終わってから、なんだか、フィクションというよりは自伝に近いんじゃないかと思った。それぐらいやっぱりリアリティというか説得力を感じる。

久米田康治アレルギーでない方はぜひ。
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