FOREST

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトのFORESTのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

Twitterでのやたら高い評価を見て、声優さん達も何人か知っていたので、ほぼ初見でしたが見に行った。

凄まじく映像と音楽と声の感情のぶつかり合いでぶん殴ってくる映画だった。噂に違わず素晴らしい作品だった。

歌劇で舞台に立つけれど、いつもは生活をともにしている少女達だからこそ、ずっと隠して抱えていた「ずるい」「妬ましい」「嫌い」という、わがままで独善的だけど真っ直ぐな思いを、向かい合う少女同士の心象風景に沿った形で描いている。しかも、歌劇だからこそ舞台装置に表現上の制約がなく、全力で映像表現ができる。
剣戟、デコトラ、競技、舞台裏への逃走、東京タワー破壊、生と死と再生などなど。
皆殺しにあっても蘇り、ショーは続いていく。Show Must Go On.
目まぐるしく移り変わっても、どんなシーンを持ってきても何の違和感もない。
衝撃でした。 まだここまでの自由な映像表現があったかと。
ダブルミーニング・伏線・象徴・ファウストなどの既存作品リスペクトの宝庫。

必ず口上と名乗りを挟み、武器を持って戦うのも、様式美的で素晴らしい。
ぶつかり合ってわかり合っていく。

特に、言葉だけを信条とし心の支えにしていた少女が、「そんなものは私に届かない」とはねつけられ、割腹を迫られた。 その刀を持って、言葉ではなく気迫で斬りかかっていくのは心に刺さる熱いシーンでした。


さて、これまでエヴァに代表されるセカイ系では、主人公が壮大な世界の運命を背負い、主人公一人の心の機微だけを大きくフォーカスして、テーマを描いてきました。
セカイ系でなくても、これまでの作品上の描写は、作品それ自体のメインテーマから自ずと制約を受け、そこから逃れることは出来ませんでした。

一方のレヴュースタァライトは、メインのテーマは「卒業」という実写作品で語り尽くされたのではないかという甘々なテーマなのに、そこに歌劇というテーマを持ち込むことで「レヴュー」という舞台装置を成立させ、そこで揺れ動く心情のぶつかり合いを心象風景で表現している。 キャラクターの信条自体は泥臭く独善的で小さな世界であっても、その世界に制限はなく無限に広がる。
キャラクター同士がぶつかり合うことで膨大な熱量が生まれる。
だからこそ、これほどまでに映像的に優れ、見るものに衝撃を与える作品になったのではないかと思います。

また、歌劇がテーマである故に、有名作品へのリスペクトをモチーフにしているのは勿論のこと、生活を犠牲にする日々の努力、オーディションの悲哀、制作陣側が作品を世に出す時の恐れ、劇を支える裏方などなど、膨大な演劇に関わる背景をも描ききっています。演じている声優さん自身にも通じるテーマであり、日々の思いと重なる部分も多くあったでしょう。
そこまでに気持ちが込められた演技とミュージカル調の歌、そして制約のない映像表現が連動し、溢れ出る奔流がパワーとなり、ガツンガツンと衝撃を受け続ける時間でした。

そして、キリンはこの作品のファンのモチーフであり、初見の僕とも十分に重なった。
なぜなら、この作品の流れは深く知らずとも、何かしらの作品に魅せられたことがある一人だから。
魅せられて望んだからこのストーリーがあり、自分がその熱で燃え尽きるほど、できるならその作品の一部として身を投げ出したいぐらいの熱量を持っている、誰もがそんな心に残る作品の思い出があると思います。

初見の僕の思いすらスムーズに取り込み燃え上がる。
なんて恐ろしい作品か。
作品をずっと追い駆けていたファンならひとしおだったでしょう。

初見でも間違いなく素晴らしい作品と理解できた。
間違いなく映画史に残したいほどの作品。
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