RyanMihawk

竜とそばかすの姫のRyanMihawkのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
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SNSや口コミの評判に惑わされたくなかったので初日朝イチIMAX鑑賞 予告を見た時から楽しみだった!まず歌が良いし ベルのデザインが良いし 完全に美女と野獣オマージュだし!期待値MAX
予感通りかなり好きな映画にまとまっていてめっちゃ満足感
以下ネタバレ感想
Uという謎の巨大SNSはサマーウォーズ時代の夢インターネットからあまり進歩のないガバガバ設定スペースな訳だけど それで全然良い それはそれでと言った感じ
というのはあのUというスペースは全世界規模のSNSなどではなくひとりの女性の内面世界でもあると捉えられるから
現実で不幸に見舞われて自己表現を上手くできない女性がインナーワールドでは自我を解き放ち自己実現している、というのが最初の筋
who is she?というのは当然who am I?ということでもある
本当の自分とは何なのかというアイデンティティの揺らぎ
十代の繊細で厄介な自意識にひとつの答えを与える場所であるU
そしてそこに突如現れたお尋ね者の竜
コンサートをめちゃくちゃにされたにも関わらずベルは竜に惹かれてしまう
禁忌的な恋が芽生え、竜は誰か、という話の筋にシフトチェンジしていく
この竜探しというのは一見、浅薄なSNS批評くらいに捉われがちかもしれないけれど、十代の女の子の理想の恋人探しのことである
自分の恋人に本当に相応しいのは、幼馴染のイケメンではなくどこか遠くの誰かかもしれない 孤高のアーティストかもしれない 傷を負っても立ち上がり続けるアスリートかもしれない 男か女か年齢さえも分からない という話であってスリリングで面白かった そんな誰かを探し始めるベルはやがて竜の城に招かれる この竜の城のデザインも引用も私はけっこう好き かなり長尺をとってこの世界観とベルのコンサートを見せ続ける構成も私としては嬉しかった 大画面と贅沢な音響でベルの歌を聴けるのが良かった
そして映画のまとめとしては、仮想世界の理想の姿を捨てて自分の素顔を世界に晒すことで理不尽な暴力に晒されている少年を救えるのかという話になっていき大円団 かつて母親が見ず知らずの少年に施した無償の献身と同じ選択をすることによって傷ついた魂も回復するということなんだけど 実際起こってることは14歳少年に寄り添いつつ幼馴染のイケメンもステイというかなりの強欲展開 自らのショタコン趣味も開陳しつつこれから女子高生の白雪姫人生が始まるんやな!というわがまま欲張りENDでしかないわけだけど思い切りが良くて私は好きやで😊
それにしてもこのインターネットの構造への感覚ってプリパラ見てるか見てないかで完全に断絶してしまう気がする マジで「みんなともだち!みんなアイドル!」並のSNS感 もしくはアイカツ!「なりたい私へ、ミラーイン☆」
現実世界はやり直せない でもUではそんな人生をやり直せる
そんなものは欺瞞に満ちた美辞麗句であり実際に本当に行き場のない魂を救うためには直接会うしかない そこでなんだかんだ簡単に会いに行けちゃって大円団というのは矢張りインターネットへのFUCKが足りないとは思うけど、SNSというのは便利で快適な世界の為の道具であって欲しいという願いも分かる 片田舎の無名の女子高生が作った歌をネットにアップする、それだけで世界中の人に聞いてもらえるチャンスが生まれるというのは冷静に考えて夢のような話だし
でも結局SNSにできることなんか歌を届けることだけ 本当に大切なことは電車を乗り継ぎ、知らない街を歩き、見ず知らずの人と出会うということ そういう結論にも賛成と言いたい(絶対いろんな人から非難受けるだろうというのも分かりつつ) まあしかし、東京行きが何故かすず一人だけに託されてしまう感じとかは矢張り東京さえもすずの内面の話、理想の恋人に会いに行く夢の話なのかもしれない
そしてJin Kimさんを起用したベルのデザインも矢張り良かった
ディズニープリンセスの意匠を踏襲しつつも確かに感じるKPOPアイドルへの目配せ 最高
Uの世界はCGでやってると思うんだけど芝居付けも表情も良かった 監修の山下高明さんの仕事ということだと思う
それにしてもベルと竜の突然始まるロマンス、意味不明構造の仮想空間U これはもう完全に女児向けアニメの世界感であり多くの観客は置いてけぼりをくらうだろうけど、アイカツやプリパラで育った現役ティーンエイジャーたちにはどう響くんだろう 良い反応がもらえたら嬉しいと思う 誠に勝手な話だが😅
あとめちゃ気になったのは父性の歪みだな
経緯はよく分からないけどDV野郎と化している恵の父親 父親にできることなんか見守ることだけ、という感じのすずの父親
そして仮想空間Uの自警団長・ジャスティンはすずの内面化された父性だと思った 現実の彼女の父親がしない抑圧や追跡をしてくる存在 アンヴェール(=unveil:ベールを取る)に拘泥するジャスティンはベル(belle/bell)に執着する父性そのもの 現実の父親の力が弱い分、内面化された父性が暴走しているということと解釈したら中盤の展開も腑に落ちる 不在の父性、理想の父性の失脚、というテーマは今後も考え続けるべき重いテーマだと思うし
そんで竜は誰か?という問いの答えはいくらでも映画に衝撃を与えるギミックとして使えそうなもんなのに、そこはどんでん返しとかまったく無く普通にひっそり暮らしている東京のイケメン少年なんや!という…勿体無いと言えば勿体無い仕掛けなのに…細田作品だもんな~という説得力と、これが見れて良かったな~というか、マジで女子高生が自分のショタコン趣味に気付いた映画ってことになっちゃってると思うんだけど、この満足感よ…😌
RyanMihawk

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