どらどら

竜とそばかすの姫のどらどらのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
4.8
- さあ、世界を変えよう

大切な一人の喪失
それは少女にとって、世界の喪失だった
もう一人の自分で
否、本当の自分で
たった一人のあなたを救うことで
世界を変える
世界を、取り戻す

わたしの問題は世界の問題
世界の問題はわたしの問題
あなたの問題はわたしの問題

わたしを変えることは、世界を変えることなのだ

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あらゆる意味と言語がインターネットを中心に、そして現実世界でも同時進行的に喪失しつつある現代において、細田守監督が新たに放ったのは、「世界を失った少年少女が、インターネット上での自己実現を経て、さらにそれを捨て去ることで、本当の自分として世界を取り戻す」物語だった。
世界より自分を選んだ物語が「天気の子」ならば、自分を選ぶことが世界を救うことになるという物語が本作というところか。
「未来のミライ」という作品の賛否の本質が作家性とエンタメ性の両立の問題にあるとしたならば、本作は細田守が高い作家性を失わずにエンタメ性を大きく底上げした/取り戻した傑作だと思う。

類型的な家族問題の描写には少し見飽きた感もあるが、これが今もどこかで起こっている問題なのであるから、目を逸らしてはいけないということだろうか。

まさに神は細部に宿るというように、一つ一つのシーンに細田監督が命を燃やしていることが伝わってくる。映画館でUの世界と現実の世界を飛び回りながら、Belleの歌を浴びる体験は、まさしく映画体験そのものという感じがした。

役所広司の声が胸にすごく響き、同時に幾田リラが普通にうまくてびびった。

初日とはいえ、金曜午前とは思えない人の入り、しかも一人で見にきている人の多さに、細田ファンの熱意を感じた。

追記:仲良くしてる映画好きの方が、脚本の粗が気になったと言っていたが、それを確信犯だと思えるかどうかがこの映画に乗れるかの分岐点な気がする。僕個人は細田守をとても信頼しているのでまだ、この無茶苦茶さが恣意的だと思ったし、だからこそ世界とわたしというテーマが引き立つと感じた。
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