カズミ

竜とそばかすの姫のカズミのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

奥寺さんが脚本を担当した監督の映画はすべて好きだ。
前作同様、本作も監督自身が話を書いたことで、ストーリー自体はツッコミどころが多めだが、発想やグラフィック、そして何より歌唱シーンの美しさが際立っており、一本の映画として楽しむことはできた。

SNSを題材としているためか、前半は特に人の悪意が前面に出ており、感情移入できるキャラクターに欠けるのが惜しいところ。ヒーローまがいの自警団をガストン的立ち位置にしていたのは、なるほどなと笑ってしまった。
人物では唯一、カミシンが可愛いな、と思っていたら、途中からルカちゃんの思わぬ一面が出て、二人の初々しさに大爆笑してしまった。幸せに青春していただきたい。
そして、クリオネくんも途中現れた儚げな少年も好きだなあ、と思っていたら、まさか同一人物とは。巡り巡って自分たちの力になろうとするベルを一番初めに見つけて応援してくれたのが、他でもない彼だと思うと、なんだか胸がギュッとする。

竜の正体が判明し、恵の胸を掻きむしるような訴えを経て、忍に促され、自らアンベールすることを決める後半の鈴の選択を際立たせる効果はあったものの、匿名が約束された世界で初めましての相手に「貴方は誰なの?」と幾度も問いかけ、あろうことかネットを駆使してリアルに突き止めようとする様は、さすがに違和感を覚えた、というか軽く引いてしまった。
欲を言えば、彼女が彼を気にかけ、現実世界で助けを求める人物なのではないか、と訝るシーンなどを前半にもっと挿入してくれたなら、わかりやすく入り込むこともできたのではないか、と思わなくもない。
しかしそうなると、最後の歌唱シーンでハッとさせられた、後先を考える余裕もなく、ただ目の前の危険に身体が飛び出してしまった母の気持ちに気づく娘という理屈が崩れてしまう気もするので、難しい……

終始、やはり自然などの映像は美しいし、安定の幻想的な巨大クジラも印象的。挿入歌もすべてが心を洗うメロディーで、その声と表現力が映画を全体を底上げしていたように思う。また別に、サントラが聴きたくなりました。
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