七沖

竜とそばかすの姫の七沖のレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.2
〝もう、ひとりじゃない。〟
かつて水難事故で母を失った引っ込み思案な高校生・鈴は、世界的に人気の仮想空間Uで、アバターのベルとなって歌姫として人気を博す。だが、初ライブの日に竜という獣に似たアバターが乱入してきて…というストーリー。

劇場公開時は観に行こうという気にならず、遅ればせながら観てみた。
サマーウォーズのアップデート版といえる仮想世界の表現は圧巻で、これは映画館で観なかったことを後悔するレベルだった。
主題歌の「U」は公開時から色々なメディアから流れてきたが、劇中映像と共に見るとなお素晴らしい。
モチーフにこそなっているが、「美女と野獣」とは全く別の物語だ。

鈴/ベルを取り巻く人間関係は様々だが、評価する人がいればけなす人もいて、その逆も然りというバランスがリアルで良かった。
鈴が炎上してボードゲームみたいに鎮火していくのが面白かった笑

サブキャラ達がけっこう好きで、照れてずっと顔を覆っているルカと動揺しまくるカミシン、そしてその間を取り持つ鈴が可愛すぎる。
あと、近所のおばさん達が頼もしくて、何故か安心する。こういうの大好きだ。

「あなたの力になりたい!」
そう言われた方の気持ちが生々しい。
竜の正体については色々推測しながら観ていたが、これは想像の斜め上だった。だが、冒頭から一貫して描かれていた利他的な愛を考えると、これしかなかった気もする。
その上での鈴のライブシーンは素晴らしい!
息継ぎの肩の上下すら、アニメだからこそそこに手間がかかっているのが分かって見入ってしまう。

ただ、気になったことも…。
ラストの障害を乗り越えるシーンはエモいにはエモいが、いやそうはならないだろ…と思ってしまった。
大人ってあんなに迂闊ではないし、弱くないよね…と、自分も大人になってしまったからこそ思ってしまった。
鈴が去ったあと、彼らは本当に大丈夫だったのだろうか。
子供同士で決着するドラマなら気にならなかったが、大人との対決を描くとしたら、どうしてもリアリティが気になってしまった。
七沖

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