都部

プリズナーズ・オブ・ゴーストランドの都部のレビュー・感想・評価

1.0
園子温監督のハリウッドデビューという文言だけで押し通すにはあまりにも無理がある映画で、本人の作品内でさえ一歩間違えると激しい陳腐化を招く園作品の演技傾向や演出、それらの灰汁だけを取り上げるような外様脚本と本人の悪癖の悪魔合体により最低を冠するに相応しいザマに成り果てている。全編に渡る手癖のような気の抜けた感じが酷すぎ。

本作の舞台となる和洋折衷の奇妙な西部的世界観は物語に帰依している部分が少なく、日本人監督がハリウッドの脚本で映画を撮るという物珍しさを際立たせる為の、安直なお膳立ての結果に過ぎないものだ。
ではその陳腐化上等のカオスな世界観に独自性があるかといえば皆無で、海外作品における似非日本としても半端で、マッドマックスを思わせる取り敢えずの世紀末感は観客の精神を逆撫でする子供騙しで不愉快。

ニコラス・ケイジ演じるヒーローも西部劇におけるヒーロー像をモデルとしていると思われるが、それにしたって完成度に欠ける人物背景の描き方であるし、愚図な世界観に対する没入感を損なっている人間からするとその様式美すらまるで呑み込みにくい。そんな彼がママチャリを漕いだり片方の睾丸を爆破されたりと奇行を演じるわけだが、このニコラス・ケイジに面白いことをさせるセンスも大概に古臭く芸がない。

このトンチキな物語を作るにあたり日本人を招聘して監督に据えるなら園子温その人で正解なのはその通りだが、そもそもこの不出来な脚本に合致する園子温の作風の灰汁の部分だけで映画を撮っても面白くなるわけがないし、すべてにおいて選択を誤っている映画のように思えてならない。
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