高柳総一郎

プリズナーズ・オブ・ゴーストランドの高柳総一郎のネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

 サムライランドの銀行が二人の強盗によって襲撃された!
 捕まり刑に服する強盗の片割れの前に、街の支配者ガバナーが現れる。孫娘をゴーストランドなる崩壊した高速道路跡から連れ戻せば、釈放してやると嘯く彼に、しぶしぶ了承する男だったが──

 『冷たい熱帯魚』などでお馴染みの園子温監督、ハリウッドデビュー映画。
 個人的に推してる俳優坂口拓さんもハリウッドデビュー作となり、主役は俺のオールタイム・ベスト映画『コン・エアー』の主役、ニコラス・ケイジ!ウキウキしながら観に行ったんですけど……。
 はっきり言うけども。実はこの映画の前に『DUNE』を観に行ってて、眠いしアート作品で難解だし、物語のドライヴかかるのは遅えし!って文句言ってました。この映画を見たら、DUNEは超名作になってました。アート作品でも映像の説得力とそれに付随する真摯な設定の解説はセット。それができてるのでDUNEは名作。しかしこの作品はなあ……
 なにせこの作品、ヒロインの孫娘を助けに行く→ゴーストランドに囚われて戻れないのでどうすべきか考える→街の支配者を倒すという、骨子だけで言えば『MAD MAX: FR』と同じはずなのに、主に第一幕から第二幕でとにかくアート作品をやりたかったのか意味不明な映像が挟まる。それがもうとにかく意味不明としか言いようがない。
 アート作品にしたいならば、物語上なぜそのような状況なのか? 主人公やゴーストランドに住む人々の生活とどう結びついてるのか? とかが映画としては重要になるんですけど、お出しされたのがツギハギのマネキンに封印される人やら、高校演劇創作ダンス(これはマジでそういう他ない)を踊る人々なので……。
 マネキンもあれ人をマネキンにしたい男(FGOのレフ教授そっくりな栗原類。ファンなら必見)が勝手に作ってて、なんだったら表面剥がせばすぐ復活って感じだし、創作ダンスもそのリーダー(何故か一人だけ韓国語?)も、ゴーストランドに囚われた者たちの生活と運命に結びついてるとは到底思えない。
 最終的に、フクシマ、核廃棄物などのワードが出てきて、ゴーストランドとはガバナー(つまりは政府の者という意味)によって14:45の時(東日本大震災の時刻ね)に止められた者たち(忘れられたゴースト)の集落で、たまたまそれに巻き込まれた核犠牲者の囚人が主人公やゴーストランドの民を引き止めていたってわかるという流れなんです。
 大変立派なテーマだと思うし、それを否定するわけじゃないけれど……あらすじで書いたようなクソバカ設定でやるテーマとは到底思えないし、劇中ではそのあたりの重要な話を、わざわざ紙芝居で(しかも学生演劇みたいな演出で)やるんですよ。ハリウッド映画とは???
 坂口拓さん演じるヤスジローは、全く喋らない用心棒として、妹のためにガバナーに協力してて──で、ニコラス・ケイジ演じるヒーローとのバトルにもつれ込むんですが、この辺にかかるアクションなども消化不良。もっとみたかったし、なんならそこを主軸に置いてほしかった。
 安易にフクシマやらなんやらを入れるのなら、もっとサムライランドの人間たちがそういう事故があったけど忘れている、とかそういう含みを持たせるべきだったし、そこまでやってもストーリー上必要だったかは甚だ疑問。
 ただ、サムライランドのトンチキな美術やら、一部グロ演出のキレキレさやら、ニコラス・ケイジのキンタマがピンチになるシーンやら「こういうシーンの連続でやれば神作品になったのでは…?」というシーンが多かった。なんか最高級食材で料理失敗しちゃったけど、この辺は食べられる!みたいな映画。
高柳総一郎

高柳総一郎