このレビューはネタバレを含みます
昭和の銀幕を彩った撮影所『銀映』が閉鎖されることとなった。その特集として、若くして引退した藤原千代子のインタビュー企画を立ち上げた映像会社社長の立花は、彼女の大切にしていた『鍵』を渡して企画を実現する。
1923年生まれの千代子は、この鍵にまつわる恋とそれを巡る壮大なる運命の話を始めるが──
今敏監督脚本作品のアニメ映画。千代子の語る過去、出演した映画、はたまたそのいずれとも異なるであろうこれまでに『千代子』が辿った軌跡を、名も顔も知らぬ鍵の君との悲恋悲運を織り交ぜて語られる、壮絶な愛の物語。
今まで『なんかみんな見ててみんな絶賛してるけど、なんか今更見るのもなあ』みたいに思ってた代表格の映画だったわけですが、いやそらみんな絶賛するわ。
セル画メインの恐ろしくよく動く美しい動画に乗せて、虚実織り交ぜた世界に展開される美しくも切ない千代子の人生。それでいて、もしかしたらこの『千年』とは、単に様々な映画に出演した彼女を指すだけでなく、彼女に課せられた永遠に終わることのない運命そのままなのではないか──。考察が捗る!
ラスト、鍵の君を追って宇宙船に乗って彼方に旅立とうとする千代子はつぶやく。彼女のその言葉こそ、彼女の若さと力の源だったのは言うまでもない。大傑作だぜ!