凡人では思い付けないイマジネーションを持った監督の、独特の世界を味わえる作品。
以前観た「マンマ・ローマ」の空き地の幻想的な風景が素晴らしかった。
今作ではギリシャ的ではないモロッコの風景も印象的だが、それだけでなく、たとえば衣装、剣などの小物などにも独創性が現れていて、それ自体が存在感を主張しているようだ。
スフィンクスもまったくらしくないところが凄い。
解説などを見ると、前後に付いた現代の映像により、今作が監督の私的な物語ということらしい。
個人的にはこの映像によって浮遊感が感じられ、普通にオイディプス王を楽しめた。
物語自体はかなり忠実に「オイディプス王」をなぞっているので、それを題材に自分を語ろうとしても、原作の持つパワーには敵わないので、結局監督のメッセージを無視して物語を純粋に楽しむことが出来てしまうのだろう。
監督の私的な主義主張には共感は出来ないが、そのイマジネーションは強烈で、印象に残る作品。
余談。
今作でスフィンクス。
着ぐるみでさえなく、ただの人が原始的な飾りをつけているだけで、そうした監督の感性は凄いのだが、この「スフィンクス討伐」シーケンスを現代の派手なCGバリバリの映像で作ったら売れそう。
今更ハリウッドで「オイディプス王映画化」など有得ないだろうが、ちょっと観てみたい気がする。