ブラックユーモアホフマン

スペンサー ダイアナの決意のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.0
初パブロ・ララインだ。
そういえばケネディ夫人のジャッキーの映画も作ってたもんな。完全に、そういう人に興味があるんだな。
公の仕事をする男性の妻になりマスコミによってスキャンダラスなイメージを流布されてしまった女性。
とは言え、無知なもんでダイアナがどういう人だったか、実はよく知らなくて。その前提を理解して観るか否かで解像度の変わる映画だったと思う。今更そこは説明しなくていいでしょ、という作り方だった故。

クリステン・スチュワートってヤンキーっぽさが魅力だと思うんですね。ジーンズとTシャツが似合う。だから高級なドレスは”着せられてる感”がある。その齟齬がこのダイアナにハマってたと思う。
ただ、どうしても母親には見えなかった。息子たちと少し歳のはなれた姉弟にしか見えず。サリー・ホーキンスが「あなたは子供よ」と言ってたように、それも狙いだったのかもしれないけど、結末も含めて考えれば母親には見えたほうがよかったのかなとも思う。
兵士ごっこのシーンはチャーミングだった。

音楽がカッコいいな、面白いなと思っていたらジョニー・グリーンウッドだった。クレジット見て知る。さすがだぜぇ……。『バードマン』のアントニオ・サンチェスのドラムっぽい感じとか、デヴィッド・ボウイの「Aladdin Sane」とかみたいな。モダン・ジャズ的な?詳しくないくせに当てずっぽうで言ってます。

ショーン・ハリス史上最も人間味ある役だったんじゃないだろうか笑 こういう芝居もできるのね!となんか安心した笑 何考えてるか分からない怖い役でしか見たことなかったから。

面白かったけど、しかしイマイチ印象に残りづらい映画だった気もする。追い詰められるダイアナの極めて主観的な視点のみで描かれ、周りの人間との関係性を濃く描いてはいなかったからだろうか。

ファーストカットでなんとなく『叫びとささやき』を想起したのだけど、アン・ブーリンの描写とかも見るにつけ、あながち近からず遠からずだったかもしれない。
今日はよくベルイマンを思い出す。混乱する母に戸惑う息子、という点で『フェイブルマンズ』ともほんの少し通ずる。
ちなみに本作冒頭に出てくる文言で「fable」というのが「寓話」という意味の英単語であることを知った。なるほどそれで”Fableman”ね……。

幽霊という単語が出てくるだけでも湧き立つ、自分のこの興奮はなんなんだろうかと思った笑 幽霊譚の何がそんなに好きなんだろう。

【一番好きなシーン】
生家(ここには、未来がなくて、過去と現在は同じ。と言うのも面白いと思った。全てが既に決められていて自分には選択権がないという閉塞感をこう表現するかと。)