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ホロコーストの罪人のShinMakitaのレビュー・感想・評価

ホロコーストの罪人(2020年製作の映画)
2.1



1942年、オスロ。ナチスドイツ占領下で、ノルウェーに住むユダヤ人たちの受難が始まった…

食料品店の店主として一家を支えるベンツェン・ブラウデには、頼もしい息子たちがいた。長男イサク、次男チャールズ、三男ハリーの3人。特にチャールズはボクサーとして活躍し、美人のラグンヒルと結婚して新生活を始めたばかりだ。秋になり、ナチスの命を受けたノルウェー警察から住民登録アンケートが配布された。ベンツェンは律儀に従って警察署で登録を済ませるよう息子たちに命じる。チャールズは最後まで「僕はユダヤ人じゃなくノルウェー人だ」と拒むが、結局は従ってくれた。迫害を恐れてリトアニアから亡命してきたブラウデ一家には、ノルウェーで再び酷い扱いは受けないだろうという思いもあったのかも知れない。しかしこの住民登録を元に、ユダヤ人男性全員が突如逮捕され、トンスベルグの強制労働施設に送られるという事態になった。そして翌月には、今度はユダヤ人女性と子供が貨物船ドナウ号に押し込まれ、ある場所へと送られることになった。それはポーランドのアウシュビッツ収容所。同じ頃、トンスベルグでも大部分の男性たちが貨車に押し込まれてアウシュビッツへと送られた。ノルウェー国内のおよそ1600人以上いたユダヤ人のうち、多くがスウェーデンに脱出したが、770人が結果的にアウシュビッツ送りとなる。生存者は、わずか38人であった。


「ホロコーストの罪人」


以下、ホロコーストのネタバレ。


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ノルウェーのホロコーストものです。ポーランド、ハンガリー、フランス、オランダ、ベルギーとあらゆる場所からユダヤ人移送がされてきたアウシュビッツ。ノルウェーは700人と極めて少ない数で目立たないんだけど、実はナチス占領国の中で両極端な対ナチ対応をした国なんだよね。

ナチス侵攻に徹底抗戦した国王ホーコン7世(劇中チャールズがナチのクルマに傷をつけたあの名前)の「対応」と、本作で描かれた「対応」。本作は、ノルウェーの普通の国民である警察官たちが、アウシュビッツ移送を嬉々としてやっていたという事実に基づいています。同じナチス占領国では、デンマークとは真逆の展開になったという点が注目すべき事実です。デンマーク、ほとんどのユダヤ人がアウシュビッツに送られてないんですよ。それはレジスタンスの存在によるもの。ノルウェーのレジスタンスが名を売るのは1年後なんです(テレマークの要塞ね)。もっとも、ノルウェー警察の態度を見る限り、ノルウェー人ってかなりユダヤを嫌っていたようなので、仮に組織力が有ってもアウシュビッツ移送阻止や亡命幇助をやろうとしたのかどうか、疑問は残りますけど。

前半の幸福な結婚から徐々に不穏さを増す展開とスリリングな劇伴で、スピード感のあるエンタメ度の高い映画でした。母親サラがクルマを移る場面や、収容所到着・脱衣からシャワーへのシーンでの無音演出など、忘れがたい部分も多かったです。オススメ。
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