SANKOU

地獄の花園のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

地獄の花園(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この手のぶっ飛んだ映画を真面目に論ずるのもどうかと思うが(笑)、実は馬鹿馬鹿しいだけでなく王道バトル漫画へのアンチテーゼとも取れる作品で興味深かった。
主人公の直子はどこにでもいるような平凡なOLで、ほんわかとした気分で同僚たちと楽しく会社生活を送っている。
が、彼女の周りでは熾烈な派閥争いが。
狂犬→悪魔→大怪獣と登場人物のキャラがどんどん濃くなっていく展開は笑える。
そして彗星の如く現れた蘭は、あっという間に派閥の組織図を塗り替えてしまう。
堅気のOL(というのも変な表現だが)とも親しく接する蘭は、やがて人望も併せ持つトップOLとして君臨する。
ここまではヤンキー漫画の王道としての展開。直子はよくある喧嘩番長に何故か好かれる気弱な人物で、番長と仲良く接しているためにトラブルに巻き込まれてしまう可愛そうな存在。
しかし、蘭は拉致された直子を助けに単身乗り込んだ先で、ライバル会社のOLたちにあっさりと負けてしまう。
そして実は喧嘩が一番強かったのは直子だという衝撃の展開。
直子はさらに最強のOLと言われる鬼丸と対決することになる。本来ならこの対決が映画のクライマックスであってもいいだろう。
しかしこの映画にはまだ続きの展開があった。
実は弱い者が虐められていれば助けずにはいられない正義のヒーローといった感じの蘭だが、内面は少々拗れていた。
堅気(?)の直子と仲良くしていたのも、少しドジなOLを演じていたのも、全て彼女が王道バトル漫画の主人公になりきるためであった。
自分の中で正義のストーリーを組み立てるこの手のタイプは敵に回ると恐ろしい。
喧嘩に負けただけでなく、直子が自分よりも強いことを知ってしまった蘭は、自分が主人公であることを証明するために死に物狂いで特訓する。
再び直子を倒して自分がトップになるために。
この映画の中では一度負けてしまったキャラクターはすべて引き立て役に回ってしまう。
最初はOLの皆さん、ちゃんと働いてくださいと突っ込まずにはいられなかったが、喧嘩に負けた彼女たちが健気にコピーを取ったり、お茶を汲んでいる姿には思わず笑ってしまった。
直子があまりにも強すぎるために、喧嘩に明け暮れていたヤンキーOLたちは皆普通のOLに戻っていく。
力で競い合うことの無意味さを思い知らされたかのように。
蘭は自分が主人公の引き立て役になることにどうしても耐えられないのだが、拳では何も解決出来ないし、何も生み出さない。
ラストの直子と蘭のバトルはただただ虚しい。
彼女の取り巻き連中も、彼女らのバトルに白けている風でもあった。
最後に「会社員は喧嘩なんて強くなくてもいいんだ」という至極当たり前の台詞を吐かれては元も子もないのだが。
途中何度もこれは一体何を観させられているのだろうと思ってしまったが、最後まで馬鹿馬鹿しい世界観をしっかりと貫き通してくれたのは良かった。
ただ面白いことは認めるものの、OL役に遠藤憲一含む男性をキャスティングしたのは反則だと思った。
さらにその上に小池栄子という最強のOLが存在したことで納得出来ないことはなかったが。
アクションシーンはお粗末だが、それはまあご愛嬌ということにしておこう。
永野芽郁はあざとさが若干気にはなるものの、やはり画になる女優さんだと思った。
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