しん

オートクチュールのしんのレビュー・感想・評価

オートクチュール(2021年製作の映画)
2.6
パリのオートクチュールという華やかな世界の裏にあるお針子という仕事、そしてその世界の中の移民差別を描くという複層的な作品です。この視点はなかなか面白く、普段気にしない点を伝えてくれただけで意義があるものでした。しかしその描き方は少し表層的で短絡的だったかなと思います。

まず移民問題ですが、前半はまさに社会的な差別とそれを内面貸してしまう団地住まいの人々の構図がうまく描かれていました。しかし後半になるにつれて、ひとりの差別意識へと収斂していった結果、問題の社会性が薄れてしまい、なんとなく個人の問題かもしれないと錯覚する方向になっていました。これがもったいなかった点の一点目です。

次の点がさらに問題です。それはシャドーワークの低賃金かつ過重労働問題に触れながら、それをやりがいで回収してしまっている点です。この問題をスルーすると、結局お仕事ものの平凡な作品になってしまいます。愛に回収するのも同じ問題といえます。この辺りが残念な点ですね。
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